今は知識の蓄え時~海外で猛烈に読書中! 別冊 幸せ追求ブログ
日々是学習!勉強あるのみ!
2010
12/02
Thu.
20:36:45
女に生まれたら、コレを読め ~○活必勝法
Category【社会】
女に生まれたら、コレを読め ~○活必勝法~ (2010/06/10) 勝間 和代 商品詳細を見る |
書き出しをご紹介します。
はじめに
私は「活」という字が大好きです。
活動、活発、活力、活用、活躍、活気、活路、活き活き……。
「活」のつくことばは、どれも動きがあり、元気があります。前に進もう、壁を乗り越えようという意志を感じます。
漢和辞典をみると「活」という字は、水が勢いよく流れる様子を表したものです。そこから転じて、活き活きと生きることを表しているのです。
活き活き生きること、そのために自分の頭で考え、自分のからだを動かすこと。
それが「活」です。
ところが私たちは、しばしば「活」をおこたります。
「うまくいっていない、何かやらないといえかに」とわかっていても、自分の頭でしっかり考えず、からだを動かさないことがあります。そんな状態のまま、ただ時間だけが過ぎていきます。ときには、何ヵ月も、何年も、そのままです。
あまりにもったいないことです。
たとえば、あなたがいまの仕事に不満があったとしたら、その不満を取り除けるのは、あなたしかいません。心のなかにぐずぐずと不満をかかえているだけでは、何も変わりません。
このとき、もっとも根本的な解決策は転職です。それには準備が必要ですから、時間がかかることもあります。すぐには踏み出せない人もいるでしょう。
しかし、転職はいますぐできなくても、ほかにやれることはたくさんあります。たとえば、いまの職場でコミュニケーションの方法を変えてみることです。
itunesからキャンペーン時に格安で購入しました。iPhone/iTouchで書籍を読むのは初めてです。移動時にちょこちょこ読みましたが、10個の単元がそれぞれ簡潔にまとまっていたので非常に読みやすかったです。
副題が「○活必勝法」となっているように、○の部分に文字が入ってそれぞれの必勝法を勝間さんが説明する方式です。10のテーマがありますが、詳細は以下。
Chapter1 人活
Chapter2 美活
Chapter3 就活
Chapter4 恋活
Chapter5 婚活
Chapter6 産活
Chapter7 住活
Chapter8 エコ活
Chapter9 財活
Chapter10 日本活
女性がターゲットの本ですから、美、恋、産などビジネス書にはめったに出てこない言葉が目立ちます。男性が読めば「は?」と思うに違いないと感じながらも最後まで読んだのですが、個人的には産、住、日本は共感できる部分がありました。
産に関してですが、これはどこででも言われていることですけれども、年齢が高くなるにつれお産のリスクが発生します。昔は30歳以降のお産を高齢出産と言った物ですが、この頃は40代で初産の方も多い。そもそも結婚年齢が30歳を越えているわけですから、妊娠の可能性も10代20代よりは低くなる。私もアラフォーですが子供がおりませんので、(欲しいのに)子供ができないリスクを日々感じています。20代の頃は自分の生活が楽しすぎて、すぐに結婚なんて考えませんでしたけれども、今になってみると子供が欲しいなら1日でも早く結婚して出産の準備をすべきだと思います。
また日本については、私が外から日本を見ているという立場もアリですけど、何か漠然とした不安のようなものを感じています。少子化や高齢化の問題も含め、マイナス要素ばかりがこころに浮かんでしまう。お金に余裕のある方ならば、非居住者の道を選択する可能性だってあるかもしれない。納税額だって日本は割高ですから、むしろ海外へ移住するのは賢い選択となってしまうのかもしれない。
とりあえず、女なら読んどけ。というのが正直な感想かな。特に夢だの理想だの言ってられない年齢になる前に読んでおくと、将来を見据える上で参考になると思います。
この本を読んで
・勝間さんの本を読んでいてよく思うんですが、女性は鎧を身につけろ!と言われている気になる。恋愛の話や結婚の話でも、どこか一人でがんばらなくちゃならない印象を受けるんですね。夫を当てにするなというのはわかります。人間、一人で死んでいくというのもわかります。でも、夫婦という小さなコミュニティを育もうという気配がないんですよね。それはちょっと寂しいところ。
・ただ、こういった知識は持っているに越したことはありません。リスク回避に必要な知識です。ただ男の人にしてみれば、自分の彼女がこの本を真剣に読んでいるのを見るのは嬉しくないかもしれませんね。どんどん女性に強くなられて、男性の落ち着ける場所がなくなっちゃうかも。
2010
11/01
Mon.
11:46:00
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
Category【社会】
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (2009/12/04) 岩崎 夏海 商品詳細を見る |
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プロローグ
川島みなみが野球部のマネージャーになったのは、高校二年生の七月半ば、夏休み直前のことだった。
それは突然のことだった。ほんの少し前までは、みなみはまさか自分が野球部のマネージャーになるとは思っていなかった。それまでは、どこの部活にも所属していないただの女子高生にすぎなかった。野球部とは縁もゆかりもなかった。
ところが、思いもよらない事情から野球部のマネージャーをすることとなった。そのため、二年生の夏休み前という中途半端な時期ではあったが、野球部に入部したのである。
マネージャーになったみなみには、一つの目標があった。それは、「野球部を甲子園に連れていく」ということだった。彼女はそのためにマネージャーになったのだ。
それは夢などというあやふやなものではなかった。願望ですらなかった。明確な目標だった。使命だった。みなみは、野球部を甲子園に連れて「いきたい」とは考えていなかった。連れて「いく」と決めたのだ。
私の手元にあるのが、2010年9月14日に出た第19刷です。帯にも「おかげさまで100万部突破!」とあります。とにかくいろいろなところで話題になっているので、いまさら感たっぷりですが、記録のために書いておくことにしました。
タイトル通り、進学校の女子高生みなみが、突然野球部のマネージャーになり甲子園を目指すというお話です。もともとはみなみの幼馴染で親友の夕紀がマネージャーをしていましたが、病気で入院することに。変わってみなみが夕紀のためにマネージャーを務めることになります。
そもそもマネージャーとはなんぞや?という疑問を持つみなみ。書店で「マネージャーに関する本を下さい」と尋ねると、店員はドラッカーの
『マネジメント - 基本と原則』のエッセンシャル版を進めました。とりあえず読み始めるのですが、途中でこれは野球の本ではないことに気づく。でも、世界で最も読まれているマネージメントの本という書店員の言葉を信じ、みなみはこの本とともに野球部をマネージメントしていきます。
面白いのは、大人が殆ど出てこないこと。せいぜい夕紀のお母さんと、野球部の監督でまだまだ新米の雰囲気を漂わせた加地だけです。高校生の目線から、ドラッカーのビジネス書を日常生活に落とし込んでいく姿が印象的でした。私はドラッガーの書籍を読んだことがないのですが、ドラッカーーに限らず、ビジネス書を自分に活かすにはどうすべきかがみなみの姿勢から学べます。
高校生らしい友情がこれまたスレた大人の心をくすぐるんですよね。なるほど、ベストセラーになったのがわかる気がします。あと、野球部のマネージャーだけに、名前が「みなみ」っていうのもツボですね。
この本を読んで
・素直さがいかに大切かがポイントの一つ。みなみの「必ずこの本に答えがある。迷ったらこの本に帰る」という姿勢、見習わなければ。
・女子高生といい、野球といい、ドラッカーといい、オヤジの心をわし掴みするタイトルですね。小説調のビジネス書や自己啓発書がいくつかありますが、高校生が主人公ということで新鮮味を感じました。
2010
10/22
Fri.
22:59:07
自分の仕事をつくる
Category【社会】
自分の仕事をつくる (ちくま文庫) (2009/02) 西村 佳哲 商品詳細を見る |
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まえがき
目の前の机も、その上のコップも、耳にとどく音楽も、ペンも紙も、すべて誰かがつくったものだ。街路樹のような自然物でさえ、人の仕事の結果としてそこに生えている。
教育機関卒業後の私たちは、生きている時間の大半をなんらかの形で仕事に費やし、その累積が社会を形成している。私たちは、数え切れない他人の「仕事」に囲まれて日々いきているわけだが、ではそれらの仕事は私たちになにを与え、伝えているのだろう。
たとえば安売り家具やの店頭に並ぶ、カラーボックスのような本棚。化粧板の仕上げは側面まで、裏面はベニヤ貼りの彼らは、「裏は見えないからいいでしょ?」というメッセージを、語るともなく語っている。建売住宅の扉は、開け閉めのたびに薄い音を立てながら、それをつくった人たちの「こんなもんでいいでしょ?」という腹のうちを伝える。
文庫版には、補稿として出版当時取材した方々の10年後の姿としてお二人の方のインタビューが掲載されており、もちろん文庫版のあとがきもついています。
多くの方はなんらかの会社組織でお仕事をしているかと思われますが、私はフリーランスで海外にて日本語を教えています。フリーランスですから、時間はある程度は自分の自由にスケジュールを組むことができますし、拘束される時間も会社員の方よりは少ないのですが、ふと「これでいいのかな?」と思うことがあります。収入が減った時や、日々にマンネリ化を感じる時などがそうですが、そもそもこれが仕事と言えるのだろうかという疑問がありました。そんな時、偶然本書に出会いました。
独特なワークスタイルをお持ちの方に著者が直接インタビューをし、その様子を伝える形式で語られています。登場する方はデザイナーや建築関係者のほか、パン屋さんやサーフボード作りに携わる方などで、ほぼ企業組織に属している人たちではありません。独立して、自分の好きな道で食べている人たちです。
仕事がうまくいっていないと相談すると、よく「ワクワクすることをやりなさい」だとか「情熱を持っていればうまくいく」というアドバイスを受けました。でも、どんな風にワクワクするのかがわからない。どうやってワクワクを見出すのかわからない。情熱を持って仕事をしている人が想像できない。私たちは生きるために働いています。お金をもらうためにお勤めしている。自分の意思で決めた仕事ではあるけれど、どうもうまく回わらない。かといって、独立するのは大変な力が必要になります。
この本に出てくる方は、みなさん生き生きとした風情で極端に言うと「三度のメシより仕事が好き!」っていうのが冗談にならないほどのめりこんで仕事をしておられる。それが苦ではなく、やりたいからやっている。「好きを仕事にする」とかそういうんじゃなくて、全エネルギーを仕事に注いでいる風なのです。それも強制でもなく、自分のペースで仕事をし、確固たるこだわりや価値観をしっかり持っておられる。道が見えているというんでしょうか。生き生きしてるんですね、みなさん。
仕事って、こんなに楽しくやれるもんなんだ!という気持ちになりました。悶々としている現状に光が差し込むような印象です。みなさんかっこいいお仕事なので、本書の内容にキレイごとだと考える人がいたそうです。でも、なかなか自分の仕事に充実感を持っている人に出会うことは難しい。だからこそ、私はこの本で「仕事、好き!」のモチベーションを支えたくなりました。仕事を楽しむお手本です。
この本を読んで
・ワークデザインのお話がためになりました。特にフリーでお仕事している方には参考になると思います。
・これからは大量生産の時代ではなくなるのかもしれませんね。だれもがそれぞれクリエーターのように仕事をすれば、幸せになっていくのかな?
2010
07/28
Wed.
09:52:11
モテ本!ハイパー
Category【社会】
モテ本!ハイパー ~いますぐ男の見る目が変わる150のテクニック~ (だいわ文庫) (2010/05/10) 恋愛マニア 商品詳細を見る |
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プロローグ よくばり恋愛のススメ
いちばん好きな人い愛されるのと、モテモテになるの、どっちになりたい?
「そりゃ、やっぱり…いちばん好きな人に愛されたい」
うん、あたしも同じです!でも、モテモテの人を見たら、うらやましくならない?
「まぁ…ちょっとは、ね」
それなら、どっちかなんて言わずに、どっちも選んじゃおっ!
だって、愛されると、モテモテ。どちらかだけなんて決まり、どこにもないのだから。
これ、買った覚えがないんです…。ジュンク堂のカバーがかかっているところをみると、きっと先月京都で購入したんだと思いますが、どうも思い出せない。一体いつの間に…。思うに5月に出た文庫ですから、新刊コーナーのところにあったものを何気なくカゴに入れたか、他の本と重なっていたことに気づかずに買ったか、その時は「これは読むべし!」と気合を入れて購入したも、時が流れてその時の勢いを忘れてしまったのか…。ぱーっと読めそうな本でしたので、とりあえず手にとってみようと思いました。
モテ本って、コミュニケーションや人脈を広げるのに役に立つ分野だと思っています。そういう目で読んでいると、たしかにプラスになる部分が沢山ありました。例えば、人に声をかける方法やタイミング。見た目に関しても、女性の場合は女性雑誌ではなくて男性雑誌を参考にすべき!(理由=男性雑誌に出ている女性モデルは、男性の目から見てイケてる場合が多い。女性誌のモデルは実はあまり男性には魅力的に見えない場合があるらしいです。)なんていうのは「なるほど」と思いました。
実は一番役に立ったのは、携帯メールの文章。日本を離れてそろそろ8年。私がいた頃には使っていなかった言葉や絵文字がたくさんあるのです。顔文字は今は使わないのかな?この本を見ていると、☆が随分使われていて、こういうのがカワイイを演出するのかなーと思った次第。こういうの、上手に使ったほうが効果的ですね。文字だけの堅いメールが一瞬にして温かくなる感じがしました。
この本を読んで
・今更モテるもなにもないですが、とりあえず「なるほど」という感じ。
・肉食だの草食だのと言いますが、表に出すか出さないかの違いで、実は数年前とそんなに変わってないんじゃない?と思うけど、いかがでしょうか。恋愛にしても、仕事にしても、何事も努力が必要なのね。
2010
04/01
Thu.
18:46:32
アホの壁
Category【社会】
アホの壁 (新潮新書) (2010/02) 筒井 康隆 商品詳細を見る |
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序章 なぜこんなアホな本を書いたか
ある日新潮社の石井が原宿のわが家にやってきた。この人は知る人ぞ知る、この新書の担当重役であり、『バカの壁』『国家の品格』など、さまざまなベストセラーを生み出した人である。またこの人は新潮社の名物的存在だった重役、故・齋藤十一の薫陶を受けた際に「本の出来や売れ行きはタイトルで決定する」ということを叩き込まれていて、だから前記二冊を含む多くの新書のタイトルを命名してきた。その石井氏がこの日、小生に「人間の器量」というタイトルを提示して新書の執筆を依頼したのである。
私はまだ『バカの壁』を読んではいないので比較はできませんが、きっと「たわけもの」について書かれた本なんだろうなぁと想像します。もちろん本書も「たわけもの」というか「やれやれ」と言いたくなるような人について書かれた一冊です。個人的に「アホ」と聞くと、関西のお笑いのようなイメージを思い浮かべますが、本書はそんな楽しい笑えるアホについて書かれた本ではありません。笑いとは違うベクトルにありますので、ご注意を。
アホと言っても、思わず笑ってしまうようなアホらしい人もいれば、もうどうにもできない呆れる以外に手の施しようがない芯からアホな人間もいます。この本は後者について書かれた本です。自分のことは棚に上げ、「そうそう、こういうアホな話、あるよねー」と思いながら読みました。
アホなこと、それには小さな小競り合いから戦争までと非常に幅広い。社会には本当に呆れるようなことが沢山あります。納得したのはアホなケンカはアホが勝つというお話と、ナショナリズムのお話。特にナショナリズムに関しては、外国に出てから初めて愛国心というものを経験した私には「なるほどー」と思いつつもニヤリとしてしまいました。
タイトルからは想像できない社会派の一冊です。
この本を読んで
・今まで筒井康隆氏の書籍と言えば『文学部唯野教授』のイメージが強かったのですが(実際、この本は何度も読んでいる愛読書です)、この一冊を読み、もっと他の書籍も読んでみたくなりました。SFモノも面白そうですね。
・この本を読みながらココイチでカレーが出てくるのを待っている間、「あほやっ。あほやっ。」と思わずつぶやいてしまうような出来事がありました。アホにならんように気をつけなくちゃ。でもかわいいアホの存在は、やっぱり世の中必要だと思います。それにしても、どこを見てもアホばっかりだったりしますよね。そんな私もアホ人間ですが(汗)
2010
03/11
Thu.
21:52:25
アイルランドを知れば日本がわかる
Category【社会】
アイルランドを知れば日本がわかる (角川oneテーマ21 A 101) (2009/06/10) 林 景一 商品詳細を見る |
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はじめに
昔、『大脱走』という映画を観た。詰め襟学生服に制帽の中学生のときだ。
第二次大戦中の連合軍捕虜たちが、ドイツ軍捕虜収容所から何度も脱走を試みる。諦めることなくさまざまな方法で集団脱走を図り、追跡の手を逃れていくスリリングな筋立ての映画だった。テレビでも何度か放映されたので、ご存知の方も多いだろう。
が、ここで取り上げたいのは、そのストーリーではなく挿入歌のほうだ。『荒野の七人』など数々の映画音楽を手がけたエルマー・バーンスタイン作曲のテーマ音楽が、明るく軽妙な節回しで、脱走という形での抵抗を試みる連合軍兵士の心意気に寄り添うようにして流れる。この曲には歌詞がつけられ、当時人気のミッチ・ミラー合唱団が歌っていた。
収容所暮らしの憂さを吹き飛ばすために、リンダとかメープルとか間チルダなどどいった女性の名前を次々と挙げて、「彼女こそ最高だ。いや、やはりあの娘がいちばんだぜ」と歌うたわいない内容である。
タイトルに惹かれて購入しました。
まず、私はアイルランドが好きです。いつから好きなのかと言いますと、学生時代に始めてダブリンに行った時、(イギリスのホーリーヘッドからフェリーでダブリン入りし、あまりの揺れにゲロ酔いしてたからかもしれませんけど)アイルランドの空気がとっても澄んでいてすーっと染み入るような感動を感じて以来です。その後も2度一人でダブリンに行っていますが、ロンドンのような混雑はなく、ロンドンよりワントーン暗いイメージがある。でも、その落ち着いた様子がとても美しかった。今でもアイルランドに関する書籍はどうしても手に取りたくなります。
そしてこの本のタイトルによれば、アイルランドを知ることで日本がわかると言っています。帯には「資源小国としての大いなる生き方 最貧国から世界有数の豊かな国に 日本の“姿見”としてのアイルランドという国家」とあり、日本とアイルランドになんらかの類似性があることを示唆しているように見えます。でも、ここ韓国では、日韓関係を英愛関係に喩える人が少なくありません。つまりアイルランドと韓国は似た環境にあるというわけです。韓国に来て、「なるほどアイルランドに似ているな」と思った私は、日本とアイルランドの類似点ってなんだろう?と興味を持つに至りました。
著者は元駐アイルランド大使で、アイルランドに駐在される前はイギリスでも勤務に当たっておられた方です。帰国後、あまりにもアイルランドを知らない日本人が多いこと、そして約3年の任期中に得た知識のメモやお話が面白いこともあり執筆を薦められたのだそうです。
本書はまず、アイルランドの説明から入ります。イギリス支配の話とともに欠かせないのが宗教信条の問題です。その外、EU最貧国だったアイルランドが富国へと転進した経済事情なども数字を挙げて詳しく説明されています。
アイルランドの知識を掴んだ後は、アメリカ、イギリスの歴史へと遡り、アイルランドとのつながりを確認していく。アメリカの場合、移民の足跡を辿ることで両国の深いつながりを読むことができます。1845年のじゃがいも大飢饉により多くの人々が食料を求めてアメリカへ移り住みました。その移民の様子は映画『タイタニック』などにも登場します。(レオナルド・ディカプリオがアイリッシュの役)またアメリカでの活躍ですと『風邪と共に去りぬ』などにも登場します。主人公スカーレット・オハラ(O'Hara)はアイリッシュの名前です。おもしろいエピソードとして、オバマ大統領のシカゴでの票集めのお話がありました。シカゴのアイリッシュ人口は多く、地域を強く管理しています。アイリッシュの信頼を得たかった大統領は、アイルランド最大の祭りStパトリック祭のパレードに参加することを決意します。ところが指定された位置は列の最後尾で、オバマ大統領の直ぐ後をゴミ収集の車が続いていたそうです。
イギリスとの歴史的関係を整理するなかで、やはり日韓の話題に触れている部分がありました。読めば読むほど、私は韓国とアイルランドが似ていると思わずにはいられませんでした。挙げようと思えば、いくつも類似点をあげられます。現在英愛関係は良好な方向に進んでいるようです。しかし日韓関係はどうでしょうか。英愛史を通じ、日韓両国の問題を和解達成するに必要なこととして、著者は3つのポイントを挙げています。
①両国の相互依存関係が切っても切れないほど大幅に進展し、人的往来もまた今以上に盛んになること。
②そのことによって、相対的な経済格差がなくなるか、あるいはむしろ逆転するような事態が生じること。
③また、広い地域的枠組みの中で対等な共同体パートナーとなり、ともに汗そして血すらも流すようなプロセスが進むこと。
(P155より)
韓国に住んでいながらも、実は日韓の歴史に明るくない私には、非常に勉強になる項目でした。英愛は言語問題がありませんが、日韓はそうはいきません。よって人的往来も英愛よりは難しいかもしれない。そして日本には在日問題があります。この問題は英愛とは大きく異なりますね。また宗教が大きなポイントとなっている英愛とは違い、日韓には信条による問題はほとんどありません。
最後にアイルランドを日本の姿見とし、両国の関係や歴史を説明しています。私たちがイギリス人として理解していた人が、実はアイルランド人だったようです。小泉八雲がアイルランド人であることは有名ですね。資源の少ないアイルランドでは、人が最大の資源であるとして非常に思い切った政策を打っています。それが結果としてアイルランドを富国へと導いたのではないでしょうか。
アイルランドを知るキッカケとしても良書ですが、日本のあり方を考える上でも非常に参考になります。これは文句なしにおススメ。
この本を読んで
・あまりにも沢山思いついてしまうので記しませんでしたが、アイルランドと韓国は本当に似ています。面積、人口分布、経済などなど本当にそっくり。アイルランドから学びを得られる要素があるということは、韓国からも学びは得られるということではないでしょうか。アイルランドも韓国も、面積・人口が日本より少ないことから、小回りが利くという長所があります。現に韓国は日本よりも早くにインターネット政策が進んでいますし、何か新しいことを行おうと思った時も、あっと言う間に各所に手が届く。そこにはシステムの違いなどがあるかもしれませんが、それでも日本が韓国に遅れをとっている部分は日本の皆さんが思っている以上に多いのです。そんなことを改めて感じました。
・私はアイルランド文学が好きなのですが、もう少しそんな紹介があれば嬉しかったなーと思いました。そうそう、ノーベル文学賞受賞者のシェーマス・ヒーニーが俳句に魅せられていたという行を読み、じんわりと心が温かくなりました。アイルランド文学と日本文学、こういうところで文学世界のつながりがあったのか!このエピソードにものすごく感動!
2010
01/18
Mon.
09:16:22
負け犬の遠吠え
Category【社会】
負け犬の遠吠え (講談社文庫) (2006/10/14) 酒井 順子 商品詳細を見る |
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本書を読まれる前に
・負け犬とは……
狭義には、未婚、子ナシ、三十代以上の女性のことを示します。この中で最も重要視されるのは「現在、結婚していない」という条件ですので、離婚して今は独身という人も、もちろん負け犬。二十代だけどバリバリ負け犬体質とか、結婚経験の無いシングルマザーといった立場の女性も、広義では負け犬に入ります。つまりまぁ、いわゆる普通の家庭というものを築いていない人を、負け犬と呼ぶわけです。
結婚していない=負け犬、とすると、
「でも○○さんみたいに、美人で仕事もバリバリやってる人は、結婚していなくても負け犬ではないのでは?」
と、南アフリカにおける名誉白人のような例外を作り出そうとする人がいるものです。が、どれほど仕事が有能であろうと美人であろうとモテていようと、負け犬条件にあてはまる女は全て負け犬である、というのが本書のスタンス。
もう7年前の作品になるんですね。講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞した酒井順子さんの大ベストセラー。「負け犬」という言葉が流行になった2003年頃、すでにソウルで生活していた私には、「負け犬」の定義がよくわからずに居ました。何をもって「負け」なのか。しかも勝つ側ではなく、あえて負け側の意見(それも遠吠えですよ)を語るのか。でも、その後雑誌やテレビでも「負け犬」という言葉が使われるようになり、「未婚の女性である」という大体の定義がわかるようになりました。
私が読んだ文庫本版には、メスの負け犬2名(酒井さんと編集者)+オスの負け犬4名の対談が載せられている他、林真理子さんのあとがきもついています。林さんのエッセイを読み、当時人気となった背景がよくわかった気がします。そもそも随分時間が経ってから読んでみようと思ったのは、『ぼくらの頭脳の鍛え方』で佐藤優氏が推薦していたから。なんとなく知っているよりも、一度は読むべきエッセイだと思います。
上の書き出し部にある「負け犬」の条件によりますと「未婚」が絶対条件のようですが、読んでいるうちに「ああ、私も負け犬だわ」という自覚が芽生えました。今の私はこの本を書かれた頃の酒井さんの年齢に近く、既婚ではありますが子供がありません。少子化の問題が挙げられるにつれて、どんどんと負け犬であるという自覚が芽生えてくる。結局女性が担う社会的割合の中で、どうしたって男性にとって変われないのは子供を生む、次世代を生むということ。なのに条件的には勝ち犬である私は子どもを産んでいません。しかも、病院に行って治療を受けるなどの処置もとっていないですし、「何としてでも産まねばならぬ!」という強い意志もないのです。エッセイを読んでいるうちに、いいんだろうか、これで…としばし考えてしまいました。
ところで、韓国では未婚で仕事を持つ女性を「ゴールド・ミス」と呼びます。オールド・ミスから派生した語ですが、お金があるから安易にゴールド(金)というお気軽さ。これは「負け犬」に比べて随分やさしい言葉のような気がします。この本では30代後半あたりから「負け犬」としても意識が強くなるようですが、韓国の場合は20代後半、30になったからゴールド・ミスと呼ばれるようになるようです。韓国のメス負け犬の場合、やはり経済的に安定していな社会の様子が結婚を推し進めない理由になっているのもありますが、2000年を過ぎたあたりから女性の社会進出が目立つようになり、企業で働く女性たちが今、ようやく役職を持つようになりました。2000年に就職した女性が、今ちょうど30代前半です。仕事も面白いでしょうし、責任も重くなる。そして韓国の場合、男子には兵役義務がありますので、大卒で社会に出る年齢が早くても26歳過ぎです。同世代の男性は社歴も短く、どうしたって仕事が出来る男には見えないはず。これも社内恋愛のネックになっているとか。
あとどうしてもはずせないのが、カップルは年上男子&年下女子べきであるという風潮です。韓国には女性が歳上というカップルは多くありません。これは儒教文化にも関連するのですが、韓国語は年齢に従って、相手への呼称が変わります。なぜなら年長者に力があるから。男性は女性から「お兄ちゃん」と呼ばれるのを好み、女性は男性から「お姉ちゃん」と呼ばれるのを好みません。カップル間では、名前で呼ぶより、この「お兄ちゃん(オッパ)」で呼ぶのが通常で、そこに女性の愛嬌があります。ですので、男性に「お姉ちゃん(ヌナ)」と呼ばせるのはちょっと…。男性の権威が示し難くなるんでしょうね。あと、長男世襲が強いので、人口の男女比がすこーし狂ってきているとか。男性が多いのですが、女子は農村や地方へ嫁ぐのを嫌がります。よって初婚ではない男性でも、良い職業・良い家系に育った方は再婚、最再婚なんかも多いとか。でも、韓国は世界ワースト2の少子化国家です。でもって、離婚率もアメリカに継ぐ世界2位。日本とは随分環境が異なりますね。
7年経った今、日本の状況は変わっているのでしょうか。この本、続編があるようです。
儒教と負け犬 (2009/07/01) 酒井 順子 商品詳細を見る |
おお、儒教だよ。これ、読みたいなぁ。
この本を読んで
・外から日本の様子を見ていると、男性の元気がないように見えるんですね。ちょっと前まで「草食男子」なんていう言葉も出てきてました。最近では「婚活」なんて言葉も普通に使われるようになっているようで、「おいおい。日本の若者よ!どうなってるの?」と尋ねたく。ソウルに旅行にいらっしゃる方を見ていても、男女のカップルより女子同士・男子同士っていうのが多いみたい。(ま、ここはカップルで来るようなロマンチックな土地じゃないですけど)
・今まで目を瞑るようにしていた「子供を産んでいない女性は婦人科の病気にかかりやすい」という言葉。この本を読み、またドスンと重みを感じています。やっぱり考えなくちゃ。
・もし「結婚なんてよいとこないよ!」という理由で負け犬を続けている人がいたら…ですが、個人的には結婚は良いものだと思いますよ、私は。
2009
12/17
Thu.
09:47:15
イギリスの夫婦はなぜ手をつなぐのか
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イギリスの夫婦はなぜ手をつなぐのか (新潮文庫) (2009/11/28) 井形 慶子 商品詳細を見る |
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はじめに― 夫婦になったら淋しくなった
イギリス関連の本を書き続けてきた私は、これまで何人もの人に頼まれ、イギリスを案内した。
特に2004年に太平旅行会社が企画、開催した「イギリスの普通の家々をめぐる旅」では、読者の方々とアッパーな会社社長の住む一軒家から、高齢者が一人で暮らす築400年のコテージまで、10軒余りのイギリス一般家庭を見て回り公表を博した。このツアーの目玉は、個人の住宅の寝室やバスルーム、クローゼットの中まで全て見られることだ。参加者の大半は30~60代の女性。イギリスの人々と直接触れ合えると好評で、回を重ねて今に至る。
この書き出し部は、こう続きます。
日本からツアーに参加した方が、口々に「イギリス人のだんな様は奥さんを本当に大切にしている」とか「イギリス人のご夫婦はとても仲睦まじく暮らしているのが羨ましい」と仰ったんだそうです。まぁ、隣の芝は青いといいますからね、他所がよく見える傾向にあるのかもしれません。
ところで「理想の夫婦」とは一体どんな夫婦でしょうか。夫婦の間のことなんて、本人たちにしかわからないことが沢山あります。お手本探しも難しい。昔のアメリカのコマーシャルに出て来たような若くてきれいなお母さんと、ネクタイ締めて七三分けのお父さんが子犬のようにはしゃぐ子どもに囲まれて・・・っていうのが理想の家族、理想の夫婦なんでしょうか。自分のパートナーとの関係がパーフェクトなものかどうかは、相手をどう見るかによると思います。マイナス面ばかりに注目すれば、それはやっぱり物足りない関係になるでしょう。短所を引き立てる長所があれば、良い関係と感じるかもしれません。それに長く夫婦をやっていると、与えるよりも与えられたいという欲求も高まるもの。何かをしてもらって当然と思っているようでは、これから先が心配になります。他と比べてうちは…などと嘆いていてもどうしようもない。
イギリスの場合は、家族という単位がありながらも、根底に個人を尊重する文化があるように思います。結婚して子供を産んだ女性が、完全な「お母さん」になってしまうことはなく、女性のままでいられるような文化があるようです。きっと「○○ちゃんのお母さん」なんて呼び方をしたら、イギリスのママたちは怒っちゃうのかもしれませんね。
大抵の場合、一番身近な夫婦像はやっぱり自分を育ててくれた親です。この頃、世代差によって夫婦像も異なるのでは?と感じるようになりました。著者が言うには、団塊世代はがむしゃらに働いた世代で、家庭を顧みずに血縁よりも会社の人脈を濃くするのに力を注いだ世代。今、退職なさったお父さんたちは、おうちの家具以下の扱いを受けているとか。私の両親も団塊世代ですが、たしかに今の私の年齢の頃の両親は、家庭よりも仕事が優先だったように思います。そんな夫婦を見て育った私たち。少子化や晩婚問題には「夫婦像」が関連しているのかもしれないですね。
そしてもう一つ。女性の社会進出が進みました。若い世代は、それを別に特別なこととは感じないかと思いますが、40代、50代の男性の中には、「女は家にいるものだ」という人だってまだまだ多いんです。特に私の住んでいる韓国では、その傾向が非常に強い。互いに納得できてるならよいでしょうけれども、もし奥さんが外に働きに出たいとか、自分の力を社会に活かしたいと思っていたら、ご主人の主張はとても窮屈で奥さんを苦しめると思います。
海外の夫婦がどのように暮らしているのかを知ってみるのも、自分を振り返る上で良い事かもしれません。まずは互いのパートナーに感謝すること!
この本を読んで
・韓国では、女の人が結婚して子どもを産むと、途端に本人の名前を呼ばれることがなります。夫からは「ヨボ(おまえ・あなた)」と呼ばれ、子どもには「オンマ(お母さん)」と呼ばれ、近所でも「○○オンマ(○○ちゃんのお母さん)」と呼ばれ、親戚にはそれぞれの親称で呼ばれる。私が思うにですが、女性が名前で呼ばれないような環境を作ってしまうと、どんどん女性から遠退いていくような気がします。
2009
12/15
Tue.
14:36:37
放送室
Category【社会】
放送室 (幻冬舎よしもと文庫) (2009/11) 松本 人志高須 光聖 商品詳細を見る |
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ぷろろぉぐ
番組のコンセプト
松本 あの~、ものすごい、マイナーな感じにしたいねん。
ファンみたいのおるのかどうか知らんけど、そんなん
がスタジオの外に集まるようになったら、辞めなアカン。
高須 辞めなアカンと!(笑)
松本 そう、この放送は「密室芸」やから。
高須 聴いたヤツは「言うな」いう事なんやろ?
人に言うたらアカンと。
松本 そうそう、絶対言うたらアカン。部屋で聴いてても、もし
誰かが入ってきたら、もう消さなアカン。
高須 スッと消さなアカンと。
高須・松本 (笑)
これはダウンタウンの松本さんと、放送作家の高須さんの「放送室」というラジオ番組のネタをコンパクトにまとめたものです。実は「放送室」はCDでも出ておりまして、私はそのCD全10巻がものすごく欲しかったりするのですが、5万円もの大金が捻出できない・・・。ということで、この本を購入してみました。
放送室 1 (2008/04/23) 高須光聖 松本人志松本人志 商品詳細を見る |
大阪弁って、文章にしてみてもテンポを感じられて、あっという間に読み終えられちゃいますね。これを実際にお話として聞くのであれば、間やリズムの差を差し引きが加わって、結構な長さになるんじゃないかなと思います。読み応えは充分です。最近は島田紳助さんの『紳竜の研究』(こちらはDVDです)など、芸人さんの書籍やDVDが人気を集めているようです。笑いで人を魅了し、お茶の間の人気者となる姿は、ビジネスパーソンが人望を集め成功していく姿に似ているのかもしれません。私は単に笑いたい!という欲望大でこの本を手に取りましたが、読後の感想は「この人たち、スゴい!」でした。
アイデアを出すには、普段から広い視野で物事を捉えなくてはならないと思います。お二人はそれが普通にできちゃってるんですね。なんだろう、もう天性のもの、とでも言うのでしょうか。いろいろな角度から物を見れるというのは、一種の才能ですね。
この本を読んで
・相手を楽しませるっていうのは、簡単に見えて実は高度な技が必要なんだと思います。お笑いって、根が面白い人が出て行けば成功しそうな世界だと思っていましたが、本当はもっと繊細で、丁寧に言葉を扱う世界だと実感。圧倒されます。人を楽しませること。これは人に接する仕事をしているならば、誰もが楽にコミュニケーションを取れるようになる秘訣なのかもしれません。
・同じ物事を私が話すのと、プロの話し手さんが語るのでは、全く見えてくる世界が違いますよね。これはとても大切なことだと思いました。さっそく授業の時にも意識してみよう。
実行すること
・人を楽しませる。楽しませている人をもっと観察する。
2009
11/25
Wed.
08:38:39
超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方
Category【社会】
超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方 (2008/03/14) 小室 淑恵 商品詳細を見る |
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先日、母校の女子大で公園をしたときのことです。そろそろ就職について考え始める2年生を対象に、私自身のこれまでの経験や最近の企業はどういう人材を求めているのか、これからの社会はどう変わっていくのかなどを話したところ、終了後にある学生が質問に来て、目にいっぱい涙を溜めながら次のように言ったのです。
「小さい頃は、大きくなったら社会に出て働きたい、やりがいのある仕事を通して自分を成長させたいという気持ちが強かったのですが、いつの頃からかどうせ無理だし、まわりにも認められないとあきらめていました。でも今日、小室さんの話を聞いて、そういう行き方をしていいんだ、社会全体もそういう方向へ向かっているんだということがわかり、うれしくて、涙が出てきたんです」
彼女の姿は、実は十数年前の私の姿でもあります。
今やワーク・ライフバランスという言葉はずいぶん定着し、どこでも聞かれるようになりました。掻い摘んで言うと、仕事もプライベートも充実させるべく能率をあげるということですね。
特に女性は家庭での役割に求められる部分が多いですし、出産や子育てなどどうがんばっても女性にしかできない部分も存在します。一昔前は結婚と同時に仕事を辞めて家庭に治まったり、妊娠を期に退職するという方も多くいらっしゃいました。しかし今は女性も社会の中で活躍する場が増えていますし、性別よりも「その人でなくては!」というニーズが出てきている。そこで、女性がどのように社会に貢献しつつ、家庭や自分の成長を妨げずに生活するをサポートしてくれる強い味方が登場しました。
女性の私には得るところ多し。現在私が暮らしている韓国は、出産率が世界でワースト2という大きな問題を抱えています。(ちなみにワースト1はボスニア・ヘルツェコビナだそうです。)実際、共働きをする夫婦は多いです。とは言え、近所のコンビニの時給は300円くらい。女性も正社員でない限り、それなりの給料が得られる保証はありません。ですから、お子さんのいる家庭では、親に子供を預けるという現象が起きています。
日本ではちょっと考え難いこの現象。問題は多々です。まず、養育施設が足りない上にバカ高なので利用できる人が限られている。これは国家が手を打たなくてはならない問題です。でもこれも、都市だけに見られる現象で、その他の地域はすでに過疎化が拡大し続けています。
そして祖父母と暮らしている子ども達には親から離れる寂しさ(捨てられたと思う子もいるそうです)や、食の問題(加齢と共に味覚が衰えるので、お年寄りの料理には塩分が多目というデータがあります。これを乳幼児が食べるので、幼いうちから成人病の危険性にさらされているそうです)、また教育問題にまで問題が広がっているとか。それでは「産めない」という選択がなされても仕方がない。
日本はまだまだ豊かな国ですので、この本にある解決法が充分活かされるでしょう。能率を上げるためにはどのような社内アピールをすべきか、どのようなマインドを持つべきか、家庭内ではどのように家事分担をすべきかなどの具体的な例が挙げられています。小さなお子さんのいらっしゃる方や、これから社会に出ようとする女性、結婚を目の前にキャリアについて悩んでいる女性には必読の1冊です。
本書には、こうあります。
ワーク・ライフバランスは、知識ではなく経験であるということです。自分をとりまく状況はどんどん変化しますし、自分自身も変わっていきます。ワーク・ライフバランスに「ここまでやれば終わり」ということはありません。また、自分のワーク・ライフバランスだけでなく、家族のワーク・ライフバランスを考えることも大事です。
ワーク・ライフバランスは、常によりよく生きていこうという、行き方そのものである。それが私の最近の実感です。
先輩からの心強いメッセージです。闇雲に経験を積む前に、まずはご一読下さい。
この本を読んで
・上にも書きましたが、女性が社会に進出し始めている日本ならではの1冊だと思いました。きっとヨーロッパやアメリカなどでは、もっと斬新な意見もあるのでしょう。その点、韓国はまだまだ一歩も二歩も遅れてる。飛行機に乗っても思いますが、韓国の航空会社の乗務員はみんな若い女の子ばかりです。長距離便ですとたまにおじさんが乗ってますが、殆どが20代の女の子です。これは会社でもよく見られる現象で、女の子には仕事の質以外に求められてる部分が多いように思えます。
・少子化問題も、こういう側面から見てみると「なるほどな」と思える部分が多々あります。国の偉い人たちも、この本を読んでどんな準備をすべきか、知っていただきたいですね。
実行すること
・女性だからといって、諦める必要はなし。ライフプランを立てること。
2009
09/01
Tue.
09:21:02
ルポ 貧困大国アメリカ
Category【社会】
ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書) (2008/01) 堤 未果 商品詳細を見る |
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二〇〇七年七月のカリフォルニア。うだるような暑さの中、マリオ・フェルナンデスは最後の荷物を車のトランクに詰め込んだ。妻のマリアは放心したように「差し押さえ物件」(Foreclosure)の札をつけられた家の前に立ちすくんでいる。
銀行の差し押さえ率が全米1位であるここストックトンの町では、このひと月だけでこれと同じ札が三〇軒の家につけられた。サブプライムローンの支払い延滞で次々に空き家が増えた街は、今ではしんと静まりかえりすっかりゴーストタウンと化している。
2008年に日本エッセイスト・クラブ賞受賞、2009年には新書大賞受賞の作品です。いろいろな書評サイトで話題になっていたのですが、なぜかすぐに手に取るには至らず。今、もっと早くに読めばよかったと後悔しています。
私はアメリカ本土に行ったことがありません。実はMJ以外にアメリカに興味を持てる部分は少なく、行ってみたいと思うこともありませんでした。テレビで流れてくるNYの街角や、LAのリゾート地のような明るさに「貧困」という言葉を結びつけて考えた事はありませんでした。ただ、度重なる銃を用いた犯罪や、ドラッグの話など、貧困よりは安全に暮らせないイメージが強かった。
この本を読んで驚いたのは、底辺に住む人々がこうも簡単に政府によりひねり潰されてしまうのかという現実でした。南部を襲ったハリケーン・カトリーナの被害については記憶に新しいところです。それが人災だったとは。アメリカの肥満はなぜこうも蔓延し、改善に向かわないのか。日帰り出産をするほどの医療負担の現実。そして軍隊・・・。
今まで、アメリカのきらびやかな部分をさらっと見るだけだった私には、本当に衝撃以上の何ものでもありませんでした。アメリカと言えば、アメリカン・ドリームです。危険を冒してまでアメリカで暮らしたいと願う人も後を絶ちません。しかし、アメリカで生まれた人ですら、今は貧困の波に立ち向かうことすら難しい。それにしても、ブッシュ政権は本当にイロイロなことをやってくれましたね。
格差が広がるアメリカで、弱者の立場を徹底的に取材なさった著者の使命のようなものを感じました。これは一人でも多くの人が読むべき本です。すでに多くの方がお読みになっているとは思いますが、今後の日本を考えるにも、必要な一冊だと思います。
この本を読んで
・MJが「子ども達を救わなくてはならない。今すぐに行動しなくては手遅れになる。」と多くの活動をしていたこと、要約今になり多くの人にも知られるところとなりました。今まで彼の言う「子供たち」とは、アフリカの飢餓や戦争地域の子供たちのことだと勝手に解釈していました。でも、もしかすると彼が見ていたのはアメリカの子供だったのかも。親が貧困であることから、教育も受けられない。生きるための選択肢が多くない子ども達。そうせざるを得ない事情は、アメリカの貧困という環境の中にあったんですね。
・もういろんなところで書かれてることですが、ブッシュ政権には驚きます。ハリケーン・カトリーナ事件の裏にこんなことがあったとは・・・。それにしても、彼が余りにダメだったので、前任のクリントン大統領も、後任のオバマ大統領も無条件に立派に見える。
・何かとアメリカに追随する日本ですが、このままで良いのでしょうか。この本を読むまで、弱者が強いられる生活について具体的に想像することなどありませんでした。自分がこの立場になったら、と思うとぞっとします。しかし、アメリカには既にそうやって暮らさざるを得ない人がたくさんいる。アメリカの印象がガラリと変わりましたし、日本の未来にも危機感を抱かずにはいられません。
2009
08/27
Thu.
15:06:06
日本の難点
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日本の難点 (幻冬舎新書) (2009/04) 宮台 真司 商品詳細を見る |
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若者のコミュニケーションはフラット化したか
「若者のコミュニケーションはフラット化したのか」とよく尋ねられます。人間関係が希薄になっているのか、という問いに殆ど同じです。フラット化しているのかどうか。その答えは「フラット化」ということの意味によってはYESです。というのは、「フラット化」といってもいろんな側面があるからです。
とりわけ人間関係においてフラット化を語る場合に、必ず問題にしなければならないことがあります。「尊厳と他者(ないし他者性)との結びつき」です。「自分が自分であること(の揺るぎなさ)が何に支えられているのか」を問う場合、他者の存在が解答になるかどうかということです。
そのことが問題化するのは、「他者の存在ゆえに---他者とのコミュニケーションの履歴ゆえに---自分は揺るぎない」というふうに考えるチャンスが減ってしまったからであり、もっと言えば、そうしたチャンスを支える社会的なプラットフォーム(基盤)が空洞化してきているからです。
読み応えのある新書が増えてきました。日本の社会が、今、どの方向に動いていて、どんな状態にあるのか。外から見ていると「日本、変わったなぁ」と思うことが多々あるのですが、中にいる時には全く何にも気がつきませんでした。そもそも、日本で暮らしている頃は「この国は大丈夫」という変な自信があったものです。どうにかなる、と思っていました。でも、最近の景気の低迷や、頻繁に入れ替わる総理大臣や、「草食系」「婚活」など若者文化の変化など、「このままでいいのか?」と思うことが確実に増えてきています。
この本は、そんな日本の難点とはなんぞや?を語った本です。著者の宮台先生は社会学がご専攻です。大学の先生の本と言えば、専門用語が多いお堅い教科書というイメージがありますが、宮台先生の文調は全く対照的です。鋭いことを仰っているのですが、どこか笑える要素がある。きっとツッコミがお上手なんだと思います。
読んでよかった。満足感もあるし、モチベーションアップにもなりました。自分の所属するコミュニティには、大雑把に言えば家族、学校、職場、地域社会、そして国という順に拡大していくと思います。その一つ一つをどう捉えるべきなのか、どうやって自分なりの意見を持つべきなのかがわかりました。特に今は選挙の時期ということもありますが、自分の所属する国がどのようにあって欲しいのかを考えるには最適と思います。特に、今の日本について語られた本ですので、風化される前にお手に取ることをおススメします。久々に3色ボールペン読書をしましたが、合わせて付箋もたくさん使いました。ここ数年余り、日本に居られるのは年に10日以内でしたから、この本で知った情報もたくさんあります。難しい言葉は説明が加えられてますし、「未曾有」には「みぞう」と仮名も振られてますので、すんなり読めるはずです。
一番線を引いたのは、第一章です(コミュニケーション論・メディア論)。人と人との関係のありかたが、どんどん変わってきている。家庭という血縁のグループ単位が縮小しているなか、人の心には繋がりというものが薄れてきているのかもしれません。
そして第二章の教育の話も納得です。返って子供の成長を止めるような気がします。それも幼稚園くらいから全力疾走させられているわけですから、大学あたりで疲れが出る。そうなれば、想像力なんてものは養えなくて当然です。また、「ミメーシス」のお話にも線をたくさん引いてます。一部書き抜きますと、
僕は、東大経済学部や東大法学部の主席の人たちを何人か知っています。興味深いのは、そういうレベルの人たちになると、多くがパブリックマインドに溢れていることです。(P90)
不思議なことに、我々は自己中心的な人間を「本乙にスゴイ奴だ!」と思うことはありません。「本当にスゴイ奴」とはどんな人間なのかを、叙事詩や万物学や悲劇を通じて探求した初期ギリシアの時代から、この不思議さは気付かれていました。そのことに関係しているかもしれません。
たとえば、「本当にスゴイ奴」とそうでない奴の違いは、初期ギリシアの言葉(プラトンの言葉)で言えば、ミメーシス(感染的模倣)を生じさせるかどうかで分かるのです。ミメーシスというのは、真似しようと思って真似るのではなく、気がついたときにはまねしてしまうようなものです。(P91)
ミメーシスの話は自己啓発にも繋がります。こういう人が増えれば、日本の社会が良くなっていくのでしょう。私もこの本を読み、日本の外から何ができるかを考えています。
この本を読んで
・「ゆとり教育」の最大の失敗点は、全ての人々が「ゆとり教育」の意義や目標値を理解していなかったことにあると、著者は言っています。私はもちろんゆとり教育世代ではなく、当時はあまり気にもせずに過ごしていたように記憶しています。今になって思えば、教育というのは未来の国を担う人々を育てる機関なわけですから、そんな「私には関係ない」とは言えないことなんですよね。もっと国の教育制度に関心を抱くべきだということ、この本を読んで気付きました。
・アメリカのお話、とてもおもしろいです。確かにブッシュ政権がなければ、オバマ政権は登場しなかったことでしょう。今、アメリカ社会の構造に関心を持っているので、大変興味深く読めました。
・日本を良くしたい!という熱い気持ちがなければ、このような本は書けないでしょう。最初から最後まで説得力ある説明に関心しながらも納得できました。これは多くの人が読むべき本です。特に在外の方、読んでみて下さい。
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