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2011

07/22

Fri.

22:04:31

星を継ぐもの 

Category【海外文学


星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)
(1980/05/23)
ジェイムズ・P・ホーガン

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書き出しをご紹介します。

プロローグ

 どこか深いところからゆっくりと浮かび上がるように、彼は意識を取り戻しかけていた。
 本能的には彼は意識の回復を嫌った。彼はあたかも何らかの意思の力によって、無意識と意識の隔りを埋める容赦のない時の流れを押し留め、極限の消耗は苦痛とはいっさい縁のない無窮の非存在に立ち帰ろうとするかのようであった。
 ハンマーさながら、胸郭を内側から突き破るばかりに踊り狂っていた心臓の鼓動は鎮まっていた。体中の毛穴から彼の精力と共に滝のように流れ出た汗はすっかり冷えきっていた。手足は鉛のように強張っていた。空気を求めて喘いでいた肺は再び穏やかな、規則的なリズムを取り戻していた。呼吸音は密閉されたヘルメットの中でやけに大きく耳を打った。
 果たしてどれだけ多くが死んで行ったのか、彼は記憶を辿って考えた。死者は永遠に解放されたのだ。彼には解放はなかった。いつまで持ちこたえられるだろう?それも、いったい何のために?そもそもゴーダに生存者が残っているのだろうか?



おススメされていたSFを読んでみました。

時代は21世紀半ば。人類はすでに宇宙に飛び出し、宇宙で長期滞在すらできるようなシステムが整っている時のことです。

イギリス人で物理学博士のハンター氏が主人公です。ある日上司に呼び出され、アメリカ本社の訪問を指示されます。信頼する技術担当のグレイ氏とともに本社へ出向くのですが、二人に待っていたのは現在手がけていた仕事ではなく、国連宇宙本部への出向でした。

国連宇宙部は今、月で発見された死体の調査に携わり、どうしても解決できない部分をハント博士らが手がけていた顕微鏡の力を必用としていました。発見された死体の側にはデイパックが共にあり、その中にもいくつかの備品が納められていたのですが、到底今の地球上の技術では作れないようなレベルの機器類や地球に存在していたと思われない言葉で書かれた日記が出てきます。しかしその死体の姿は人類となんら変わらない。

ハント博士は最初は顕微鏡を使った備品の分析に従事していますが、国連宇宙軍の部長に見初められ、この月で発見された人物の深層を探るため、宇宙へ飛び出すというお話。

 この本を読んで 

・宇宙に関心のある方なら絶対に楽しめるはず。宇宙研究について随分リアルに書かれていた印象を受けました。

・なんかもうワクワクが続きます。「で、どうなったの?」みたいな気持ちが最後まで続く一冊です。


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2011

07/18

Mon.

21:29:54

わたしを離さないで  

Category【海外文学


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

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書き出しをご紹介します。

 

わたしの名前はキャシー・H。いま三十一歳で、介護人をもう十一年以上やっています。ずいぶん長く、と思われるでしょう。確かに。でも、あと八ヶ月、今年の終わりまではつづけてほしいと言われていて、そうすると、ほぼ十二年きっかり働くことになります。ほんとうに長く勤めさせてもらったものです。わたしの仕事ぶりが優秀だったから?さあ、それはどうでしょうか。仕事がとてもよくてきるのに二、三年でやめさせられる人がいますし、まるで役立たずなのに十四年まるまる働きとおした人も、少なくとも一人知っています。ですから、長いからといって自慢にはなりません。ただ、わたしの仕事ぶりが気に入られていたのは確かで、わたし自身、自負めいたものがないわけではありません。わたしが介護した提供者の回復ぶりは、みな期待以上でした。回復にかかる時間は驚くほど短く、「動揺」に分類される提供者など、四度目の提供以前でさえほとんどいませんでした。あら、これはやはり自慢でしょうか。でも、仕事をちゃんとやって、提供者を「平静」に保てたというのは、わたしにはとても大きな意味のあることです。ある種の勘が備わったのだと思います。いつ付ききりで落ち着かせるか。いつ見守っているだけにするか。いつ言いたいことをとことん聞いてやるか。いつ突き放し、いいかげんになさいと言うか。



カズオ・イシグロ氏の小説。すでに映画でご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。


わたしを離さないで [DVD]わたしを離さないで [DVD]
()
不明

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なんとも奇妙なお話。読み始めてすぐによくわからない単語がぱらぱらと出てくる。単語単体での意味はわかるのですが、作品中で明らかにキーワードであろうというのはわかるけれど、その意味時代が全く見えて来ない。上の書き出し部を読んだだけでも「これはどういう意味?」と思える語があるかと思います。

それがどんどんと読み進めるに当たって見えてくる。一つ一つ意味が見えてくるたびに、背筋にすーっと冷たいものが走るような気持ちになりました。

語り手はヘールシャムという学校で育ったキャシー・H。今は31歳となった彼女が非常に特殊な環境で過ごした学生時代を振り返っています。特殊という言葉では片付けられないほどの疑問と不思議が交互に出てくる。

学生の苗字はすべてアルファベット一文字で表されています。没個性の中に強烈な個性の主張がありました。

イシグロ氏のお話はどれも心がぎゅっとつぶされるような気分になります。
この小説もおススメ。

 この本を読んで 

・これを映像で表現するって、どんな風になるんだろう。色が見えて来ないなぁ。映画、見てみたいです。

・読了後はとにかく「うおーっ」と一人唸ってました。頭に浮かんだのは「異」という文字かな。


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2010

11/15

Mon.

08:58:53

予告された殺人の記録  

Category【海外文学


予告された殺人の記録 (新潮文庫)予告された殺人の記録 (新潮文庫)
(1997/11)
G. ガルシア=マルケス

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書き出しをご紹介します。

 自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。彼は、やわらかな雨が降るイゲロン樹の森を通り抜ける夢を見た。夢の中では束の間の幸せを味わったものの、目が覚めたときは、身体中に鳥の糞を浴びた気がした。
「あの子は、樹の夢ばかり見てましたよ」と、彼の母親、プラシダ・リネロは、二十七年後、あの忌まわしい月曜日のことおあれこれ想い出しながら、わたしに言った。「その前の週は、銀紙の飛行機にただひとり乗って、アーモンドの樹の間をすいすい飛ぶ夢を見たんですよ」
彼女は、見た夢を必ず朝食の前に話すという条件で夢判断をし、それがよくあたるので評判だった。しかし、自分の息子が見たこの二つの夢や、彼が死ぬ日の朝までに彼女に語ったほかの樹の夢については、何ひとつ不吉な前兆に気付かなかった。



『林真理子の名作読本』で紹介されていた一冊。ノーベル章受賞作家G. ガルシア=マルケスの中編小説です。

コロンビアが舞台で、27年前に起きた殺害事件を時を経て振り返る作品になっています。なぜ友人のサンティアゴ・ナサールは殺されてしまったのか。

事件はアンヘラ・ビカリオの結婚式の翌日に起きます。アンヘラ・ビカリオはよそからやってきた富豪の息子バヤルド・サン・ロマンに見初められ、ついに結婚することを決めました。しかし、翌日の朝、アンヘラ・ビカリオは夫となったはずの男の手により実家へ連れ戻されてしまいます。もともとアンヘラ・ビカリオは彼を愛してはいなかったけれど、この破綻はサンティアゴ・ナサールの人生を急に短く縮める結果となりました。

アンヘラ・ビカリオは処女ではなかった。アンヘラ・ビカリオの結婚が破綻したことを聞いた双子の兄は、相手が誰であったのかを聞きだします。彼女が口にした名前は、地元の友人でアラブ系のサンティアゴ・ナサールでした。双子の兄は怒り狂い、名誉を守るためにサンティアゴ・ナサールを殺害しようとする。この殺害計画は町の誰もが知っていました。養豚場を営む双子は、豚を殺す刀を研いで町中サンティアゴ・ナサールを探して駆け巡ります。その時、彼らは町の人々に「俺らはサンティアゴ・ナサールを殺しに行く」と告げていた。盛大の婚礼のあとでしたから、誰もが双子が酔っ払っていると思ったに違いない。ほんの数人の人だけがサンティアゴ・ナサールの命を心配して翻弄しますが、しかし彼は自宅の門の前で双子に刺されてしまいます。

南米の文化背景がわからない私には、なんとも言えない異国情緒を感じました。とは言っても、もっとミステリアスで理解の及ばない世界です。迷信がまだ生きている世界とでも言うのでしょうか。語り手である「わたし」は、今かつての殺害事件について語っています。登場人物がつねにフルネームで呼ばれるところに、彼の冷静さが感じられました。とにかくコロンビアの町は混沌としている。そこへ古い風習が複雑に入り混じっていて、人々の心にも不満が募っている。そこへ起きた殺人事件は、その複雑さを象徴するようなものでした。

最後にはアンヘラ・ビカリオの今の様子があるのですが、なんとも悲しい結末です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・コロンビアの土地柄というんでしょうかね。見えない文化背景が話しを怖く感じさせているように思います。

・これ、実際あった話がもとになっているんだそうです。

・コロンビアと言えば私は真っ先にShakiraを思い出すのですが、彼女のパワフルな歌とこの作品の世界が妙にマッチしていて、ますますコロンビアが魅惑の地に感じられるようになりました。


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2010

10/11

Mon.

10:00:50

スカーペッタ 

Category【海外文学


スカーペッタ (上) (講談社文庫)スカーペッタ (上) (講談社文庫)
(2009/12/15)
パトリシア・コーンウェル

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スカーペッタ (下) (講談社文庫)スカーペッタ (下) (講談社文庫)
(2009/12/15)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 ドクター・ケイ・スカーペッタの手術衣に、脳組織が水気を吸い取った灰色の埃のように飛び散った。手術衣の前には血の染みが点々とついている。ストライカーののこぎりが甲高い音を響かせ、滴る水がシンクをドラムのように鳴らし、骨の粉が小麦粉のように白く舞い上がる。三つある検屍台は満員だ。このあともまだ遺体が搬送されてくることになっている。今日は一月一日火曜日。新しい年は始まったばかりだ。
 ショットガンの引き金を爪先で引いたとき、この男性が酒を飲んでいたのかどうか、薬毒物検査を急がせるまでもない。遺体の胸を切開した瞬間、体内で分解されかけたアルコールの刺激臭が立ち上がって鼻をついた。遠い昔、法病理学の学生だったころ、アルコール依存症患者にモルグを見学されたら、その衝撃で即座に断酒できるのではないかと思ったものだ。ゆで卵立てそっくりに切断され開かれた人間の頭を目の当たりにし、“検屍解剖シャンパン”のほのかな香りを嗅げば、これからはペリエ一本槍でいこうとその場で決意しないともかぎらない。



検屍官シリーズ、今のところ日本で出版されているものはこちらが最新刊。もう第16弾です。
本国では2,008年に『SCARPETTA』として出版されています。

毎年1年ごとに新しい作品が出ていた検屍官シリーズですが、2000年を過ぎたあたりから、新しいシリーズが始まっているようです。でもやっぱりケイの活躍に触れたい人が多いんでしょうね。wikipediaによりますと、2009年と2010年にもシリーズが出ているようですので、今後が楽しみです。

前回、恋人だった女性の影響で薬を飲んでいたマリーノはケイとの関係を悪化させます。それを苦にいなくなったマリーノがついに再開。長年ケイの秘書を勤めていたローズは亡くなり、姪ルーシーの脳の病気は幾分よくなった模様。ベントンとの結婚生活も順調ですが、やはり事件は起きるんですね。

今回も2巻組みで、読み応えあり。恋人が殺された小人症の青年の無実の訴えは実るのでしょうか。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告
・第11弾 審問
・第12弾 黒蠅
・第13弾 痕跡
・第14弾 神の手
・第15弾 異邦人

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・今回から翻訳者が相原真理子さんから池田真紀子さんへとバトンタッチされました。シリーズの翻訳者が突然変更となるなんてめったにないこと。調べてみると、2010年1月に相原さんの訃報の記事がありました。池田さんの翻訳も相原さん同様、しっかりとした読み応えのある訳です。


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2010

09/30

Thu.

09:31:45

異邦人 

Category【海外文学


異邦人(上) (講談社文庫)異邦人(上) (講談社文庫)
(2007/12/27)
パトリシア・コーンウェル

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異邦人(下) (講談社文庫)異邦人(下) (講談社文庫)
(2007/12/27)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。


ローマ

 水がはねる音。テラコッタの床に深く埋め込まれた、灰色のモザイクタイルのバスタブ。
 時代物の真鍮の蛇口から、ゆっくり水が流れこむ。窓からは闇が流れこんでくる。古い波形ガラスの向こうには広場と噴水、そして夜がある。
 彼女は静かに水の中にすわっている。水はとても冷たい。とけかけた氷のかけらがいくつも浮かんでいる。彼女はうつろな目をしている。もはや何の感情もそこにはない。最初のうち、それらは彼に手をさしのべ、助けてくれと哀願しているかのようだった。けれどもいま、その瞳はたそがれの空のような、青あざのような色をしている。そこにあったものはもはや消えかけていた。まもなくその目は閉じられるだろう。
「ほら」彼はタンブラーを彼女に手渡した。ムラノガラスで作られたその手吹きの器には、ウォッカがなみなみとつがれている。



上下2巻です。
本国では、『Book Of The Dead』というタイトルで2007年に出ています。

ここまで来て、やっとiPhoneやYoutubeという名前が出てきました。このシリーズはどんどんとマンネリ化というか作者のネタ切れが指摘されるような書評が出ていますが、警察の世界といいますか事件や事故いった世界がよくわからない私には、どれもハラハラするような内容に感じます。

今回はいつもとはちょっと違った印象でした。ケイとベントン(彼は一旦死んだことになってるのに、どうやってまた前の名前で仕事ができているんだろう。それは謎。)は離れ離れで仕事をしています。ちなみにケイはもうフロリダにはいません。サウスカロライナだそうです。

ルーシーはまだ問題を抱えたまま。そしてマリーノはどんどんとケイとの距離を遠ざけてしまいます。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・現在出ているのはあと1つとなりました。早く続きが読みたい!





【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告
・第11弾 審問
・第12弾 黒蠅
・第13弾 痕跡
・第14弾 神の手

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2010

09/27

Mon.

08:42:13

神の手 

Category【海外文学


神の手 (上) (講談社文庫)神の手 (上) (講談社文庫)
(2005/12/20)
パトリシア コーンウェル

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神の手 (下) (講談社文庫)神の手 (下) (講談社文庫)
(2005/12/20)
パトリシア コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 日曜日の午後。ドクター・ケイ・スカーペッタは、フロリダ州ハリウッドにある全米法医学アカデミー内の自分のオフィスにいる。雲が厚くなってきていた。また雷雨になりそうだ。二月とは思えないほど雨が多く、蒸し暑い。
 銃声と、なにやらどなっている声がきこえる。週末には模擬戦闘がよくおこなわれる。特殊捜査部員たちが黒い野戦服に身をかためて銃を撃ちまくっても、スカーペッタ以外にはきこえないし、彼女もほとんど音に気づかない。スカーペッタはルイジアナの検視官が発行した緊急証明書、つまりある女性患者の診断書を検討していた。その女性はのちに五人を殺害したが、そのことをおぼえていないと主張していた。
 この患者はPREDATOR、つまり脳の異常に攻撃性の原因を求めようとする研究の被験者にはふさわしくないだろう、とスカーペッタは考えた。アカデミーの校内を走るバイクの音がしだいに大きくなってくるのを、ぼんやり意識している。
 スカーペッタは法心理学者のベントン・ウェズリーにメールを送った。



検屍官シリーズも14弾目となりました。
本国では『PREDATOR』と言うタイトルで2005年に出版されています。

今回もある意味ビックリな展開でした。シリーズを重ねるごとに、「おもしろくなくなった」という意見がちらほら聞かれる検屍官シリーズですが、今回のビックリ加減は事件解決にむけてのあまりにあっさりした描写です。ほとんど語られてないに近い。

この作品も上下巻にわかれていますが、何があっても読み進めたいと思うようなハラハラさは以前の作品より劣るかもしれません。今まではちょっと派手なアクションシーンなんかもありましたけれども、この作品は静かに静かに前進しているような印象です。

ルーシーの登場もとても少ないのですが、ルーシーにはルーシーで「どうなるんだ!?」と思わせるドッキリが待っています。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告
・第11弾 審問
・第12弾 黒蠅
・第13弾 痕跡


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・今年に入ってこのシリーズを読み始めた私には、時代がどんどん現代になってくる様子がおもしろいです。

・殺されたことを秘密にしていたベントン、ついに本名でお仕事復帰してるのね。別れた奥さんや家族はどーなったのかしら。


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2010

08/27

Fri.

08:32:42

痕跡 

Category【海外文学


痕跡 (上) (講談社文庫)痕跡 (上) (講談社文庫)
(2004/12/15)
パトリシア・コーンウェル

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痕跡 (下) (講談社文庫)痕跡 (下) (講談社文庫)
(2004/12/15)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 近代のどの戦争の犠牲者よりも多くの死者を見てきたこの市街の古い一角で、黄色いブルドーザーや掘削機が土と石を掘り砕いている。ケイ・スカーペッタは、レンタカーのSUV車の速度をとまる寸前までゆるめた。前方でおこなわれている解体工事に胸をつかれ、自分の過去を情け容赦なくつぶしていく、からし色の機械を見つめた。
「だれか、いってくれればよかったのに」
 十二月のこのどんよりした朝、ここへきたのはほんの思いつきからだった。昔勤めていた建物のそばをとおって、しばしノスタルジアにひたろうと思ったのだ。ビルがとりこわされているとは知らなかった。なぜだれも教えてくれなかったのだろう。さりげなくそのことを話にだすのが思いやりというものではないか。せめてこういってほしかった。ああ、そういえばあのビルね。昔、あなたが若さと希望と夢にあふれて、愛というものを信じていたころに働いていたところ。いまでもなつかしんで心にかけているあの古いビルが、いまとりこわされているんだ、と。



シリーズ第13弾目です。本国では2004年に『Trace』というタイトルで出ています。

検屍官シリーズが上下巻になって、これで3作目。内容とは全然関係ありませんが、この作品から文字が大きくなり、1ページ当たりの行数が減ってます。前作を読んですぐ、引き続きこの本を手に取ったので「あ、字がデカい。」と真っ先に思いました。それから、漢字が少ない。上の書き出し部はいつも自分でタイプしているのですが、どんどんと漢字が少なくなってくる気がします。どのくらい漢字が減っているかというと、明らかにシリーズがスタートした頃よりも、ページ内の白いスペースが目立っています。漢字が減ると、こうも読みにくく文体が軽く感じられるものなんですね。これ、2巻に分ける必要はなかったんじゃないかな。字も大きくし、ひらがなを増やしてまでページ数をかせぎたかったように思えてしまうなぁ。

さて、リッチモンドの検屍局を辞めたケイは、今ではフロリダにオフィスを構えています。姪のルーシーもNYからフロリダにオフィスを移しました。(そういえば一緒にオフィスを開いたATFの先輩はどうなったんだろう。この頃登場しませんね)マリーノもフロリダに住んで、今ではたばこもやめてダイエットに励んでいます。

前前作で、実はFBIの作戦の一貫として、死人を装っていたベントンの存在があきらかになりました。今回はコロラドの雪山の中でルーシーをサポートする役として登場です。彼は今、どういう立場なんだろう。死んだはずの人が生きているわけだけど、FBIにまだ所属しているのかしら。その辺、はっきり書かれていなかったので、次作に期待です。

アマゾン評を見ても、どんどんとネタ切れに関する指摘が増えてますね。確かにこの作品は、一番緊張感の続かない作品だったかと思います。犯人像がはっきりしないというか、弱すぎる。ケイやマリーノやルーシーが悪に立ち向かう勇敢な姿に魅せられていた読者には、はっきり言って「なんじゃこりゃ」な終わり方。

うーん、次回に期待かな。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告
・第11弾 審問
・第12弾 黒蠅


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・1年に1作ずつ生み出すのは、とんでもなく大変なことだと思います。それも主人公を成長させながらも、展開させていくわけですから。今回はシリーズの中で一番読了後がスッキリしない作品でした。

・やっぱりケイの言動を語る際、「スカーペッタは」のようにわざわざ書き出しているのは何か意味があるのでしょうか。sheと3文字にするより、Scarpettaと9文字に増やして登場頻度も増やせば、文字数が増えるよね・・・と思ってしまうのは私だけ?


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2010

08/26

Thu.

06:58:56

黒蠅 

Category【海外文学


黒蠅 (上) (講談社文庫)黒蠅 (上) (講談社文庫)
(2003/12/26)
パトリシア コーンウェル

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黒蠅 (下) (講談社文庫)黒蠅 (下) (講談社文庫)
(2003/12/26)
パトリシア コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 ドクター・スカーペッタはガラスの小びんをろうそくの明かりにかざし、エタノールの溶液に浮かんでいるうじ虫を照らした。
 一目見ただけで、黒いねじぶたつきの標本びんに保存されているこのクリーム色の死骸が、変態のどの段階にあるかがわかった。生きていれば、この幼虫は胴が青く光る学名Calliphora vicina、つまりクロバエになったはずだ。死体の口や目のなか、あるいは生きている人間の膿んだ傷口などに卵をうみつける。
「どうもありがとう」スカーペッタはテーブルを囲んでいる十四名の警官や鑑識課員をながめた。国立法医学アカデミーの二〇〇三年卒業クラスの生徒たちだ。彼女はニック・ロビヤードの無邪気そうな顔に視線をとめた。「食卓で口にするのがはばかられるような場所でこれをとって、私のために保存しておいてくれたのがだれかは知らないけれど……」
 みなぽかんとした顔をして、肩をすくめる。
「ともかくプレゼントとしてうじ虫をもらうのははじめてよ」


さて、シリーズ第12弾目でございます。本国では2003年に『Blow Fly』というタイトルで出版されている模様。

場面が2000年代に入ってから、随分今風になってきました。携帯電話も当たり前のように登場するし、ドラマのCSIで見かけるようなお話がちょこちょこ出てきます。

今回は『黒蝿』となんともおどろおどろしいタイトル。蝿がなに!?という感じになりますが、そんなことより今作品ではありえない展開がどーん!と登場です。

このシリーズは90年代に始まっていますので、今頃読んでいる私には別の意味で新鮮だったりするのですが、90年代から次々と作品が出るたびに読んでおられる方にはこの作品あたりから「ネタ切れか?」という感想が上がっているようです。確かにオチの部分は、シリーズの始まりの頃よりも奇想天外というわけではないかもしれない。でも、ハラハラする気分はそれほど変わらないです。

今回の作品から、ケイはもうリッチモンドの検屍局長ではなく、個人的に検屍官の仕事を請けている独立した立場になっています。相棒のマリーノも、リッチモンド警察から出、ケイの姪ルーシーの設立した会社で働いています。ルーシーはといいますと、コンピューターのプログラムを開発して稼いだお金で、個人の捜査会社を作り一財産どころか莫大なお金を稼いでいる。

場所が検屍局から変わったせいか、ちょっと気が抜けた感じがしないでもない。今回の事件の舞台はルイジアナです。この作品から、ケイの第二の人生が始まるという感じでしょうか。

内容とは関係ありませんが、文章の形態が変わってきてるのがちょっと気になる。今まではケイの言動には、特別な主語がないか「私」が使われていました。ルーシー、マリーノ、ベントンの場合は「○○が」「○○は」のように言動の主をあえてハッキリさせるような書き方がありましたが、今回からはなぜか書き出し部の冒頭のように「スカーペッタは」とか「スカーペッタが」のような文章が多発。今までは、ケイに感情移入しながら読むことが出来ましたが、今回はなんだかケイの行動を眺めているような印象です。これも検屍局を辞めてしまって、頻繁に検屍をしなくなることに関係あるのかな?

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告
・第11弾 審問


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・アメリカが州ごとに異なる法律を持っていることは知っていますが、歴史の上でもまったく異なる背景を持っているんですね。勉強になりました。



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2010

08/25

Wed.

09:12:40

審問 

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審問(上) (講談社文庫)審問(上) (講談社文庫)
(2000/12/26)
パトリシア・コーンウェル

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審問(下) (講談社文庫)審問(下) (講談社文庫)
(2000/12/26)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 痣の色をした冷たい黄昏が徐々にうすれて、完全な暗闇がおとずれた。寝室のカーテンが厚く、荷造りしながら動きまわる私のシルエットがすっかり吸収されてしまうのがありがたい。これほど異常な事態にみまわれたことはかつてなかった。
「何か飲みたいわ」ドレッサーのひきだしをあけながら言った。「暖炉に火をおこして、一杯やって、パスタをつくりたい。黄色と緑の幅広いヌードルとピーマンとソーセージで。レ・パッパレデルレ・デル・カントゥンツェインを。休みをとってイタリアへいって、イタリア語を習いたいと前から思ってるの。本格的に習うのよ。話せるように。食べ物の名前がわかるだけじゃなくて。フランスでもいいわ。そうだフランスへいこう。いますぐいこうかしら」無力感と怒りをこめて言いだす。「パリに住めるわ。いつだって」それはバージニアとそこに住むすべての人を拒絶する私なりのやりかただ。



検屍官シリーズも第11弾目となりました。本国では2000年に”The Last Precinct”というタイトルで出ています。

ケイの恋人だったベントンが殺され、前作ではケイの家に狼男と言われるフランスの有名一家の息子がやって気てケイを殺そうとする。今回はその事件のすぐ直後からスタートです。事件直後、警察がケイの自宅で事情徴収する場面で、ケイは勝手に家の中を荒らされることに苛立ちながら、バージニアから出たいと思っている。

前作でケイはマリーノを連れ立って、捜査のためにパリへ向かいました。で、そこで出会ったインターポールのイケメンと寝てしまうわけですが、その男が狼男の捜査のためにアメリカへやってくる。ケイは寝てしまったことを軽率なことだったと考えているわけですが、男は執拗にケイに迫ってきます。

そんな中、ケイを襲った男は、バージニアではなくニューヨークで裁かれるということがケイの耳に入ります。理由はニューヨークで起きた事件とこの狼男の起こした事件が類似するから。ニューヨークからケイのもとへ女性検事が贈られてきます。やり手でケイと似たタイプの検事ジェイミーはケイとともに謎を解いていきますが、フランス・マフィアのような犯罪組織の謎はどんどんと深まるばかり。このお話も長く続きそうですよ。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火
・第十弾 警告


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・やっぱりベントンは死んじゃったの!?ああ、生き返らないかしら。どこかFBIの施設で生きているんじゃないかしら!と思いながら必死で読みました。

・続きが気になる!


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2010

08/23

Mon.

09:30:05

警告 

Category【海外文学

夏休みとは言っても、いつもどおりに仕事をして暮らしておりましたが、今週からダラダラ生活から脱皮です。がんばる。


警告 (講談社文庫)警告 (講談社文庫)
(1999/12/10)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

BW

一九九六年十二月六日
エプワース・ハイツ
ミシガン州ラディントン

愛するケイへ
 私はポーチにすわって、ミシガン湖をながめている。冷たい風が、髪が伸びすぎていることを教えてくれる。最後にきみとここへ来たときのことを思い出す。いっしょにすごす貴重なひとときのために、互いにあらゆるしがらみをふり捨てた。あのときのことを。ケイ、私の言うことをきいてほしい。
 きみがこれを読んでいるのは、私がもうこの世にいないからだ。この手紙を書こうと決めたとき、私の死から一年後の12月のはじめに、これを直接きみに届けてくれるよう、ロード上院議員にたのんだ。クリスマスの時期に、いつもきみがつらい思いをするのを知っている。今年はとくに耐えがたい気持ちでいることだろう。きみを愛したときから、私の人生ははじまった。それが終ったいま、きみから私への最大のプレゼントは、生き続けてくれることだ。




検屍官シリーズ第10段目。本国では1999年に"Black Notice"というタイトルで出ています。

シリーズ9作目で、ケイの恋人で元FBI捜査官のベントンがキャリーに殺されてしまいます。しかも遺体は焼死体となって見つかり、ほぼ原型を留めておりませんでした。ベントンの検屍はフィラデルフィアの検屍官が行い、ケイは手をつけてはいません。

私、ベントンは絶対に生きていると思いながら読んでいたので、この作品を読んでいる間ずーっと「ああ、ベントンに会いたい!」とまるでケイのような気持ちで事件を見ていました。

よくよく表紙を見ていただくとわかると思うのですが、表紙上部にある写真はケイの住むリッチモンドではなく、パリです。今回はリッチモンドで起きた事件の調査のためにパリにあるインターポールへ向かいます。

連続殺人犯は、パリのコミュニティーの中で守られて身を潜めている様子。インターポールのこれまた美青年とともに捜査に乗り出しますが、相棒のマリーノはリッチモンド警察内部の人事異動やゴタゴタで、警部なのにまたもや制服を着て町の保安官となってしまう。みんな、大変なことになってます。


【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触
・第九弾 業火

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・どーでもよいことなんですが、今回はケイがいかにセクシーで、いかに男受けするタイプか、みたいなことがあまりに表に出すぎているような気がしました。ベントンが50代半ばでケイが40代後半のはず。なんだかドラマのような恋愛話にちょっと気分がダウン。

・とにかくベントンに戻ってきて欲しい!生きていて欲しい!と思いながら読んでました。リッチモンドの警察でもゴタゴタがあったりして、いったいどうなってるんだと思う感もありましたが、やっぱり続きが読みたくなるように終るんですよね。


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2010

08/04

Wed.

14:15:28

業火  

Category【海外文学


業火 (講談社文庫)業火 (講談社文庫)
(1998/12/11)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 私はキッチンでランニングシューズをぬいでいるベントン・ウェズリーのところに、走っていった。恐怖と憎しみとがよみがえった恐ろしい思い出に、心臓がはげしく鳴っている。キャリー・グレセンの手紙は、郵便物や書類のなかにまじっていた。ついさっき、バージニア州リッチモンドの自宅で、ひとりでシナモンティーを飲みながら、たまっていたそれらの郵便物に目をとおしはじめたところだった。六月八日日曜日の、午後五時三十二分のことだ。
「これはオフィスに届いた手紙だね」ベントンが言う。
 彼はさほど動揺した様子もなく、かがんでナイキの白いソックスをぬいだ。
「ローズは、親展と書いてある郵便物は開封しないの」ベントンがすでに知っていることを言いたした。動悸がまだおさまらない。
「開けてもらったほうがいいかもしれないね。きみにはファンがおおぜいいるようだから」ベントンの皮肉っぽい言葉が、針のように胸をさす。



検屍官シリーズ第9段目。本国では1997年に"Point Of Origin"というタイトルで出版されています。

今回はタイトルからも想像がつくように、焼け跡から焼死体が見つかったというところからスタートします。焼けた家はバージニアでメディア会社などを経営している大富豪。彼は大の馬好きで知られていたのですが、自宅の火事で1頭の仔馬を残し、自宅から馬小屋までを失います。その自宅のバスルームからは身元不明の遺体が。

この間までFBIにいたケイの姪ルーシーは、FBIを辞めてATFというまた別の法組織に勤務をしています。ATFは火事などを担当する部門だとか。ルーシーは同性愛者なのですが、ここでまた新しい恋人ができました。そして、ルーシーの新しい上司が、これまた仕事のよくできる女性でして、ケイはルーシーを取られたような気分になります。

とにかく今回は「えーーーっ!」と叫びたくなるような終わりっぷりです。私は既に出版されたものを片っ端から読めるからいいですが、当時リアルタイムで読んでた人は次作が待ちきれなかっただろうなーと思います。

凶悪事件の片棒、キャリーが戻ってきたというだけでも怖いのに、今回はなんとも言えないスリルがありました。


【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因
・第八弾 接触

jumee☆point1d
・いやー、もうなんとも悲劇なお話です。もう、それ以外言葉が出ない。ケイ、がんばれ!


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2010

07/30

Fri.

08:33:46

接触 

Category【海外文学


接触 (講談社文庫)接触 (講談社文庫)
(1997/12/12)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 ダブリンの町はすっぽりと夜のとばりに包まれていた。寒い夜だ。部屋の外では風が吹きすさび、無数の笛がなっているようにきこえる。亡霊がとおりすぎていったかのように、突風にあおられた古い窓ガラスが、がたがたゆれる。私はもう一度枕のぐあいをなおし、よじれてしまったアイリッシュ・リネンのシーツの上に横になった。だが寝つけない。昼間見たものが頭にうかんだ。手足と首のない死体が目の前にちらつき、冷や汗をかいておきあがった。
 明かりをつけると、シェルボーン・ホテルの室内がうかびあがった。古い上質の木材や、真紅の格子縞があたたかな雰囲気をかもしだしている。ガウンをはおった。ろくに眠ることのできなかったベッドのそばの、電話に目をやる。もうすぐ二時だ。バージニア州リッチモンドではまだ夜の九時ごろだろう。市警の殺人課の責任者ピート・マリーノは、まだ起きているはずだ。たぶんテレビを見ながらたばこを吸い、何か体に悪いものを食べているところだろう。さもなければ、パトロールに出ているか。



検屍官シリーズ8冊目。本国では『Unnatural Exposure』というタイトルで1997年に出版されています。

なんと、検屍官ケイの恋人であったFBIのベントン、ついに離婚ですよ!この先このカップルはどーなっていくんでしょうねー。

今回ケイが担当したのは、胴体だけとなった殺人事件。アイルランドでも似たような事件があり、講演のついでにアイルランドのデータも調べています。ところが新たに今までの事件とは明らかに手口の違う遺体が見つかりました。似たような事件なんだけど、検屍官の目から見ると絶対に同一犯のものではない。以外な方向にストーリーは展開します。

今回は犯人がネットを駆使して、連絡を取ろうとしてきたりする。今までにはない流れです。というより、今思い返せば、ラップトップのコンピューターが一般に広がったのって95年過ぎでしたね。

姪のルーシーは相変わらずFBIで天才っぷりを発揮。相棒ともいえるリッチモンド市警のマリーノ警部も健在です。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑
・第七弾 死因

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・全く関係ないんですが、表紙の女性の写真がすごく怖い。ストーリーにぴったりな気がしました。

・時代背景がどんどんと現代に近づいてきてる感じ。1997年ごろを思い返すと、たしかにメールが急激に普及したころでしたね。



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2010

07/26

Mon.

09:19:24

死因 

Category【海外文学


死因 (講談社文庫)死因 (講談社文庫)
(1996/12/12)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 

バージニア州にとって、南北戦争以来もっとも血なまぐさい年の大晦日の朝、私は暖炉に火をおこして、暗い窓に向かってすわった。日がのぼれば、その窓の向こうに海が見えることがわかっていた。ガウン姿でスタンドをつけ、検屍局がこの一年間に扱った自動車事故、首つり、殴打、銃や刃物による死亡の統計に目をとおしていると、五時十五分にいきなり電話がなった。
「やれやれ」と、つぶやいた。ドクター・フィリップ・マントにかかってくる電話をとるのが、面倒になってきていた。「いま行くわよ」
 マントのこの古びたコテージは、バージニアの沿岸沿いの、サンドブリッジという荒涼とした地域にある。海軍上陸作戦基地と、バック・ベイ国立野生動物保護地区の間にある砂丘の後に、隠れるようにして建っている。マントは検屍局のタイドウォーター支局担当の副検屍局長だ。気の毒なことに先週、クリスマスイブにお母さんが亡くなった。ふだんなら、マントが家庭の事情でロンドンへ帰ることで、バージニア州の検屍制度に重大な支障がおこるようなことはない。ところがいまは彼のアシスタントの法病理学者が産休をとっているうえ、モルグ主任も最近やめたばかりだった。



週明け早々、またまた検屍のお話でスミマセン。

検屍官シリーズもやっと7冊目まで進みました。

今まで日本語のタイトルしか気にしてませんでしたが、シリーズ7冊目の『死因』は、本国では『Cause Of Death』というタイトルで1996年に発行されています。10年以上前のお話ですから、今ならネットや携帯が主流な分野で、ポケベルや電話が数多く登場することに時の流れを感じますね。

さて、今回もあっと驚くような展開が沢山あります。まず、検屍局長のケイとFBIのベントンとの関係が少し進展。そしてケイの姪っ子のルーシーは、ついにFBIの特別捜査官として職についています。ルーシーは相変わらず天才ぶりを大いに発揮していて、コンピューター関係の仕事をテキパキとこなしていきます。

今回はある宗教団体がからむ事件ですが、終わり方が「そう来たか!」と思わず本にツッコミを入れてしまいたくなるような流れです。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場
・第六弾 私刑

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・登場人物がどんどんと年をとってきてる感がありました。やっぱりシリーズスタート時には小学生だったルーシーが就職したことに時の流れを感じるのかもしれませんね。

・当時のFBIのインターネット技術って、きっともっともっとスゴかったんじゃなかなーと思います。でも、ルーシーはやっぱり天才。


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2010

07/16

Fri.

14:43:09

私刑 

Category【海外文学


私刑 (講談社文庫)私刑 (講談社文庫)
(1995/12/07)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 セントラルパークに深くふり積もった雪の中を、男は確か足取りで歩いていった。時間は遅かったが、どれぐらい遅いのか正確なところはわからない。ランブルのほうを見やると、星空の下に岩が黒く浮かびあがっている。男は自分の息づかいを聞き、それを見ることができた。彼はほかのどんな人間とも違う。まるで人間の肉体を持つ神のように、テンプル・ゴールトには不可思議な力が備わっていた。たとえば、だれもが足をすべらせるに違いないこんな道を歩きながら、彼は一度もすべらなかった。それに彼は恐れというものを知らない。野球帽のひさしの下の目が、あたりを見回した。
 その場所がどこか彼にははっきりわかっていた。丈の長い黒いオーバーのすそをはらって、そこにしゃがみこんだ。古びた軍隊用のリュックを雪の上に置き、血まみれの両手を目の前に出した。手は冷たくなっていたが、我慢できないほどではない。ゴールトは手袋をするのが嫌いだった。ラテックスの手袋だけは別だが、これははめていても温かくはない。彼は柔らかい新雪で手を顔を洗い、それから使った雪を玉にした。そしてこの血だらけの玉をリュックのわきに置いた。これを残しておくわけにいかないからだ。



検屍官シリーズ第6弾。

4作目の『真犯人』、5作目の『死体農場』でも追い続けていた犯人についに接近するという3部作の最終部です。

今回の舞台はニューヨーク。前作でFBIの研修中に罠に嵌められた姪のルーシーも大活躍です。ケイはニューヨークで関連事件が発生したとの情報を聞き、警部に昇進したマリーノ、FBIのウェズリー捜査官と共にニューヨークへ向かいます。冬のセントラルパークは一面雪に包まれ、そこに女性の死体が残されていました。

どうやらこの事件の犯人は、ケイが前から追い続けている事件と同一犯と思われる。ケイは犯人の姿を2度目撃しています。恐ろしい、凍るような青い目がケイの頭にこびりついている。

犯人はニューヨークだけではなく、ケイたちの住むリッチモンドにもたびたび現れ更なる事件を生み出しています。ケイの知らぬ間に、犯人は一歩一歩ケイに近づいている。ケイは犯人の過去を辿りながら、事件の解決の鍵を握ります。

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人
・第五弾 死体農場


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・文庫本なのに1冊あたり500ページを上回るという厚さですよ。それが3部作となってみて下さい。2000ページ近いんですからオドロキです。でも読まずにはいられなくなるサスペンスです。

・韓国では日曜の夜にCSIを2作ずつ放送しているんですけど、映像で見る事件ものよりも検屍官シリーズの方が怖くてドキドキするのはなぜ?


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2010

07/09

Fri.

12:13:25

死体農場 

Category【海外文学


死体農場 (講談社文庫)死体農場 (講談社文庫)
(1994/12/07)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

 十月十六日。夜のとばりの上に太陽が顔をのぞかせる頃、窓の外に黒々と広がる守のはずれに、一頭のシカが足音もなく近づくのがぼんやり見えた。頭上と床下で水の流れる音が響き、他の部屋にも順に明かりがつき始めた。どこかの射撃場からパンパンという鋭い音が、夜明けの静寂を破って聞こえてくる。私は銃声とともに眠りにつき、銃声とともに目ざめたのだ。
 バージニア州クワンティコにあるここFBIアカデミーでは、銃声が絶えることがない。アカデミーは、まわりを海兵隊の施設に囲まれた孤島のような存在なのだ。毎月、私は警備が厳重なここのセキュリティ・フロアで数日間を過ごす。ここにいれば、こちらが希望しない限りだれも電話をかけてこられないし、食堂でビールを飲みすぎた輩が私のあとをつけてくるといったこともない。
 新入りの局員やここに滞在する警察官らが入る寮は簡素だが、私が泊まっているスイートには専用のキッチンとバスルームのほか、テレビと電話もついている。喫煙と飲酒は禁止されているが、おそらくここにかくまわれるスパイや保護の必要な証人たちは、私と同じくそんな規則は無視するのだろう。



なんだかもうスゴいタイトルですね。

検屍官シリーズも第五段目となりました。ハラハラがどんどん大きくなっていきます。

今回の事件は4冊目の『死体農場』から引き続いておりまして、これからお読みになる方は、まずは『死体農場』から手に取られることをおススメします。話がきっとわからなくなると思いますんで。

さて、今回は検屍官ケイの姪っ子のルーシーが久々に登場します。1作目では小学生だったルーシーも、今やバージニア大の女子大生。相変わらず頭がよくてITに強いルーシーは、FBIで研修を受けています。アメリカだと、大学生でも優秀なら国家機関で研修できちゃうんですねー。こうやって優秀な才能を育てて行くのか。

ケイはと言いますと、相変わらずリッチモンドの刑事マリーノとともに犯人を追いかけています。ところが今回起きた事件では、ケイとマリーノの友情がなかなか力を発揮できません。

関連事件だと予測されたことから、今回検屍官ケイ、刑事マリーノ、FBIのウェズリーはバージニアを離れてサウスカロライナへと向かいます。そこで起きた少女殺害事件には、カニバリズムを思わせる痕跡が。ケイは、テキサスにある死体農場と呼ばれる研究所の力を借り、事件を解決しようと奮闘します。

一方FBIで研修を受けているルーシーにも悪の手は忍び寄ります。ルーシーを利用しようとする人間にはめられてしまい、自らの汚名を晴らさなくてはならないことに。ああ、がんばれルーシー!

ところで、4作目の『真犯人』から5作目の『死体農場』は連作となっていますが、最後まで読んでみるとまだまだ事件が解決へと向かわない!これは長編の見込みですよ。早く次を読まなくちゃ!

【シリーズ記事】

・第一弾 検屍官
・第二弾 証拠死体
・第三弾 遺留品
・第四弾 真犯人

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d 

・前作でも思ったのですが、アメリカでは事件を推測する際に、必ず人種の検討から入るんですね。

・それにしても、今回の展開は驚いた!人間関係の難しさがお話をますます面白いものにさせています。




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2010

07/07

Wed.

09:06:07

真犯人 

Category【海外文学


真犯人 (講談社文庫)真犯人 (講談社文庫)
(1993/12/06)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

プロローグ

(ある死刑囚の瞑想 スプリング・ストリートにて)

 今はクリスマスの二週間前。あと四日ですべてが無になる。鉄のベッドに横たわり、自分の汚れたはだしの足と、便座のとれた白い便器を見つめている。床の上をゴキブリが這っても、前のように飛び上がったりはしない。ゴキブリがこっちを見るのと同じ目つきで、そいつを見返すだけだ。目を閉じて、ゆっくり息をする。

        暑い日盛りに干し草をかき集め、白人のだんな衆の暮らしからすればただ同然の賃金しかもらえなかったことを、思い出す。空き缶で落花生を炒り、トマトが熟すとそれをリンゴのように頬ばったことを思う。いつか出ていくと心に誓った土地。顔を汗で光らせながら、その不毛の土地のピックアップ・トラックを運転している自分の姿が目に浮かぶ。

便器を使っても、鼻をかんでも、たばこを吸っても、看守がいちいちそれをメモする。時計はどこにもない。天気を知ることもできない。目を開けると、のっぺりした壁がどこまでも続いている。自分がいなくなろうとしている時、人は何を感じればいいのか?



検屍官シリーズの第4作目。今回の舞台もバージニア州のリッチモンドです。

まず、結論から言いますと、お話は続く模様です。今までの3冊は、できれば最初から読んだ方がいいけど、でも途中参加も大丈夫な感じでした。2冊目から読んだって、内容はわかります。でも、ココから先は絶対に順序どおり読んだ方が良さそうです。最初から読んでこそ、怖さが伝わる気がします。

さて、内容はちょっとヘビー。上の書き出し部は、これから死刑にされようという黒人の青年が書いた詩の一部。死刑囚ワデルは、女性記者を惨殺した罪で死刑を言い渡されました。ところが死刑直前となり、人権団体が動き始めます。しかし、采配をコントロールできるバージニア知事は動かず、死刑は実行されることに。検屍官のケイ・スカーペッタがワデルの検屍を行うことになります。

ところがそのワデルの死体には、ちょっと不思議な様子がありました。残された遺書のようなものが一風変わっていた。その調査を皮切りに、ワデルの死やワデルの起こした事件にまつわる謎が開かれていくのですが、新たな事件現場からワデルの指紋が発見され、謎はどんどん深まります。

ところで、全く話は変わるのですが、アメリカはその州によって法律が異なるのは皆さんご存知かと思います。死刑も州ごとに扱いが異なるんですね。バージニアは電気椅子による死刑がある模様。うーん、怖い。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・アメリカにおける人種の差というか区別は、私が考える以上に大きなものなんだなと思いました。上の黒人青年の詩がとても悲しい。

・気がついたらぐるぐる回る輪に放りこまれたような気分になりました。ああ、続編!早く読まねば。


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2010

07/02

Fri.

16:34:34

遺留品 

Category【海外文学


遺留品 (講談社文庫)遺留品 (講談社文庫)
(1993/01/07)
パトリシア・コーンウェル

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 八月最後の日にあたる土曜日、私は明け方から仕事を始めた。芝生の上に立ちこめた霧が晴れていくのも、空が鮮やかな青色に変わるのも見ることができなかった。ステンレスの解剖台はすべて、午前中一杯ふさがっていたし、モルグには窓がないのだ。リッチモンドでは、土曜から労働休日の月曜までの三連休は、車の衝突と銃撃によって幕を開けていた。
 午後二時になってようやくウェスト・エンドの自宅に戻ると、バーサがキッチンの床をモップで拭いている音が聞こえた。バーサは毎週土曜日に掃除に来てくれるのだ。ちょうど電話が鳴りだしたが、バーサには電話に出ないよう言ってある。
「私は留守だからね」大声でそう言いながら、冷蔵庫を開けた。
 バーサが床を拭く手をとめた。「ちょっと前にも鳴ってましたよ」と言う。「その二、三分前にも鳴ってました。同じ男の人からです」
「いま留守なの」私はくり返した。
「じゃそういうことにしときましょう、ドクター・ケイ」再びモップが床の上を動きだした。
 陽光あふれるキッチンに流れる、留守電の機械的なメッセージの声を無視しようと努める。秋が近づくとともに夏の間放ってあった庭のトマトを収穫し、貯蔵し始めていた。あと三個しか残っていない。ところでチキンサラダはどこだっけ?



ああ!もう検屍官シリーズ、読まずには入られない体になってしまいました。『遺留品』はシリーズ3作目です。小学生だった姪っ子のルーシーも今や高校生になっている。(でも今回は電話で登場したのみです。)

今回の事件は、ヴァージニア周辺で起きている連続カップル殺人事件。4組目のカップルは、次期副大統領とも言われている女性の娘とその恋人でした。政界の大物の娘ということで、FBIも積極的に動くのですが、それが返ってマリーノやケイからベントンを孤立させます。

しかし殺人は解決しない。そしてケイはまたもや事件に深く関っていく。今では友人となった、第一弾でリッチモンドのジャーナリストで妹を殺害されたアビーも登場し、事件の深刻さと残忍さがどんどんと浮き彫りになって行きます。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・怖いというよりも悲しいお話でした。それにしても、アメリカって事件の規模がデカすぎる!

・やはり銃がある社会って、どんなに警戒してもしきれない恐ろしさを断ち切れない。日本が(そして韓国が)いかに平和かを思い知らされました。

・しかしフィクションなのにフィクションを感じさせないこの小説。続きが楽しみです。



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2010

06/28

Mon.

16:50:27

証拠死体  

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証拠死体 (講談社文庫)証拠死体 (講談社文庫)
(1992/07/03)
パトリシア・コーンウェル

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プロローグ

八月十三日
キイ・ウエストにて

 親愛なるMへ

 太陽の下であるゆるものがゆっくりと色合いを変え、風にもうつろいが感じられるうちに、三十日がたちました。私は考えてばかりいますが、夢は見ません。
 午後はたいていルイの店のポーチで書きものをしたり、海をながめたりしてすごします。海の色は、砂州がモザイクのように入り組んだあたりではまだらなエメラルドグリーンですが、深くなるにしたがって紺碧に変わります。空はどこまでも果てしなく広がり、白いちぎれ雲がたえまなく、煙のようにふわふわと漂っていきます。珊瑚礁のすぐ向こうに怒りをおろしているヨットや、泳いでいる人たちのたてる物音や歓声は、一日中吹いているそよ風にかき消されて、ここまでは届きません。午後遅くなると、旧にはげしいにわか雨が降りだすすことがあります。でも@p-地にはおおいがついているので、私はテーブルについたまま雨のにおいをかぎ、雨が海を叩いて、毛皮を逆にこすったときのようにさか立てるのを眺めています。ときには雨がはげしく降っているのに、太陽が輝いていることもあります。



林真理子さんの「名作読本」で紹介されていたパトリシア・コーンウェル氏の『検屍官』を読んでからというもの、すっかり刑事者のミステリーに魅せられています。これは第2弾です。

今回も主人公は検屍官のケイ・スカーペッタ。アメリカはヴァージニア州を舞台に広げられる殺人事件の真相に迫ります。とにかく話の規模がデカいというか、アメリカサイズというか、なんとも恐ろしさにスパイスを加えた感じです。今回の事件は売れっ子作家の殺人です。実は作家は嫌がらせの電話を受けたり、後をつけられたりしたことから警察へ助けを求めていました。ところが、彼女の必死の願いも虚しく殺されてしまった。しかもかなり残酷なやりかたで…。

ケイは警官のマリーノやFBIのベントンとともに事件の真相に迫っていくのですが、逆にトラブルに巻き込まれ命の危険に追い込まれてしまいます。恐るべし!

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・本当は殺人とか、暴力とかの小説は好きじゃないんです。なのにこの人の本はついのめり込んで読んでしまいます。読まずにはいられないという感じ。

・今は手元に5弾目までがありますので、ゆっくりと味わいながら夏を涼しく過ごしたいと思っています。


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2010

05/25

Tue.

21:18:47

検屍官 

Category【海外文学


検屍官 (講談社文庫)検屍官 (講談社文庫)
(1992/01/08)
パトリシア・コーンウェル

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書き出しをご紹介します。

六月六日金曜日、リッチモンドは一日中雨だった。
 夜明けに始まったどしゃぶりが、百合の花を容赦なく叩いて茎を裸にし、シャドウのアスファルトや歩道には木の葉が散乱していた。道路のあちこちに小さな川が流れ、運動場や庭の芝生には即席の池ができていた。私はスレート屋根を打つ雨音を聞きながら眠りについたが、夜が霧のたちこめる土曜日の明け方に変わる頃、恐ろしい夢を見た。
 雨のしずくが縞模様を描いている窓ガラスの向こうに、白い顔が見えた。のっぺりとした人間とは思えない顔、ナイロンのストッキングで作ったできそこないの人間のような顔だ。寝室の窓は暗く、そこにだしぬけにそれが現われた。邪悪な霊とおぼしきその顔が、のぞきこんでいるのだ。私は目をさまして、ぼんやりと暗闇に目をこらした。なぜ目をさましたのかわからずにいると、電話がまた音をたてた。手探りするまでもなく、すぐに受話器を捜しあてた。



検屍官シリーズの第1作。この作品も『林真理子の名作読本』の中で紹介されていたものです。今までシャーロック・ホームズのようなクラシカルな推理小説しか読んだことはありませんでした。もろに今自分たちが生きている世代の推理小説って、やっぱりドキドキ度が違いますね。怖いのですが、先が知りたくて一気に読めてしまいます。

主人公は40代の女性検屍官で局長でもあります。イタリア系の金髪の美女という想像を持ちますが、本書にある著者の写真はまさに主人公そのもの。きっと主人公も著者のような賢そうな目を持つ美女なのでしょう。前歴が警察担当記者、検屍局のコンピュータープログラマーだったそうですから、ストーリーのリアルさにもうなずけます。まさに今もアメリカのどこかでこんな事が起きてるんじゃないか…とすら思えてしまいました。

あまりに面白かったので続きをすべてオーダーしてしまいました。これから暑くなりますので、推理小説でも読んで涼むことにしましょう。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・推理小説を楽しむ。今更ですが大人の世界に飛び込んだ気分です。

・翻訳小説を翻訳ってきっと面白いでしょうね。あまりの内容の面白さに、はらはらしながら訳すものなのでしょうか。この本もとても良い訳でした。


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2010

05/25

Tue.

10:54:14

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 

Category【海外文学


ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)
(2008/12/20)
ポール オースター、

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書き出しをご紹介します。

 私としてはこんなことをするつもりはなかった。『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』は偶然から生まれたのだ。一年四か月ばかり前に私の妻が夕食の席で発した一言がなかったら、この本に収められた文章の大半は書かれることもなく終っていただろう。一九九九年五月だったか、あるいは六月だったかもしれない。その日の昼、私はNPR(全米公共ラジオ)に出演して、最新作についてインタビューを受けた。インタビューが済むと、『全てを俎上に 週末版』のホストを務めているダニエル・ズワードリングから、番組のレギュラーになる気はないかと訊かれた。そう訊かれたとき、私にはダニエルの顔すら見えていなかった。こちらはニューヨークの二番街にあるNPRのスタジオに、あちらはワシントンDCにいて、それまでの二十分か三十分、我々はマイクとヘッドフォンを通し、光ファイバーなるテクノロジーの驚異に助けられて喋っていたのである。どういうものを考えていらっしゃるんです、と訊くと、いやべつにこれというアイデアはないんですとダニエルは言った。たとえば月に一度くらい出ていただいて、物語を語っていただくというのはどうでしょうね。




現在新潮文庫から2冊目までが出ています。こちらは1冊目。「動物」「物」「家族」「スラップスティック」「見知らぬ隣人」の5つのテーマが収められています。4つ目の「スラップスティック」とはどたばた喜劇の意味です。

全てがラジオ番組に寄せられた小話で、長いものは数ページ。短いものはたった数行です。悲しい話、じーんとくる話し、笑える話、不思議な話が次々登場します。

全米各地から集まってきただけありそれぞれの土地の話も興味深いのですが、書き手があらゆる年代に広がっていますのでその時代背景が行ったり来りするのも話しに深みを与えているように思います。

翻訳はあの柴田元幸先生です。そういえば車のビートルを「かぶとむし」と訳されているのがちょっと違和感だったかな。いろいろな口調・文調が登場し、飽きずに読めます。原文も読んでみたくなる一冊。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・アメリカってやっぱり広いですね。砂漠あり、大雪あり、都会あり、田舎あり。広い国だからこその多様さがおもしろかった。

・ちょっとビックリするような告白なんかもあって、「アメリカって…」と思ったりもしました。映画やドラマには見られないアメリカの姿を感じられます。


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2009

12/24

Thu.

09:30:16

お行儀の悪い神々 

Category【海外文学

お行儀の悪い神々お行儀の悪い神々
(2009/03/19)
マリー・フィリップス

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書き出しをご紹介します。

 ある朝、アルテミスは何匹もの犬を引き連れて散歩をしていた。するとそこに、あるはずのない木が立っていた。
 立ち入りを禁じられた丘の斜面に、ぽつんと一本だけ立っている木。無頓着な通行人の目には、ごく普通の木に映ったことだろう。だが、アルテミスの鋭い観察眼がそれを見すごすわけはなかった。ハムステッド・ヒースのこの一角は、一日も欠かさず続けているジョギングのルートでもあった。間違いない。この木はとつぜんここにあらわれた。昨日までは存在していなかった。それがまったくの新種であることも、一瞥しただけでわかっていた。一日前まで、この地球上に存在すらしなかったユーカリの一種。どこにも存在するはずのない木だ。



久々の翻訳小説。原本はこちら。


Gods Behaving BadlyGods Behaving Badly
(2008/05/29)
Marie Phillips

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ギリシャの神々が、宮殿を追われて現世に暮らしているというパロディーです。神々のパロディーと言えば、『聖☆おにいさん』を思い出さずにはいられません。この小説は、イエスが生まれる前も前、ギリシャ神話のお話です。ギリシャ神話を知らなくても、楽しく読むことができるでしょう。

アルテミスは月の女神、狩りの女神、純潔の女神で、そして太陽の神アポロンとは双子のきょうだい。今はロンドンの古い家に、美の神アプロディテやその息子のエロス(もちろん夫のヘパイトスもいます)、智恵の女神アテナ、商業と旅行の神ヘルメス、酒の神ディオニソスなどと暮らしています。そして、全能の神ゼウスは、妻ヘラに屋上に監禁されている。神々はなぜか互いにけん制し合っているというか、調和を保っていないというか、一言で表すなら不仲な感じ。そこで起きる小さな仕返しが大きな事件へと発展します。

そして2人だけ、人間が登場します。アリスとニールです。二人は長い間、好きあってはいるのですが、心を打ち明けられずに居ます。そんな彼らに神々が関って来て、話は思わぬ方向へ。人間からギリシャ神話への信頼を取り戻すお話です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

『聖☆おにいさん』ほど「こんなこと、いいの!?」と思わせるコメントはありませんが、アプロディテが美と愛を通り越して、セックスの神っぽくなっているのは笑えました。あと、エロスがイエスを信じているというのも笑えます。

・ストーリーはとても単純です。これは英語で読んでみたい。

・こういう宗教や文化に対立しながらもコミカルに表している小説はイギリスならではのように思います。しっかり笑わせて頂きました。おもしろかったです。




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2009

06/18

Thu.

11:39:05

ボヴァリー夫人 

Category【海外文学

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)ボヴァリー夫人 (新潮文庫)
(2000)
フローベール

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書き出しをご紹介します。

 私たちは自習室にいた。すると、校長が制服でない普通服をきた『新入生』と大きな教室机をかついだ小使いをしたがえてはいってきた。いねむりしていた連中は目をさました。みんな、勉強中のところを不意打ちくったように立ち上がった。
 校長はすわれと合図し、それから自習教師のほうをむき、小声で、
「ロジェ君、この生徒をたのむ。二年級へ入れる。勉強と品行がいいようだったら、年相応の上級へ変えることにするから」



この本の主人公はタイトルにもあるボヴァリー夫人。上の文章に出てくる『新入生』は後にエマという女性を娶るシャルル・ボヴァリーのことです。

後表紙の説明文を参考に簡単に内容をまとめますと、上のシャルルは後に田舎医師となり治療先の娘エマと結婚します。このエマという女性が非常に美しい人なんですが、ずっと田舎で育った上に修道院で教育を受けた時に読んだ小説の影響で「恋に恋する」体質です。しかもかなり妄想入ってまして、これがちょっと激しすぎ。シャルルと結婚したのも田舎から逃れられるからであり、街に移り住んでからも即効夫に飽きてしまう。でもって、そこに妄想壁がありますので、出てくる若者をどんどん好きになる。そのうちに身を崩して哀れな結末が・・・、というお話です。

前半部はそれほどノリノリで読書できなかったのですが、エマの感情の起伏が激しくなるにつれ、文体にも勢いが付いていきます。そこからは一気に読めました。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・一応文学部卒なんですが、ヨーロッパ文学を読むたびに「なんでもっと若い時に、あの授業を受けている時に読まなかったんだ」と後悔ひとしきり。大人になって読書を重ねるにつれ何となく時代背景が想像できるようになりましたが、でも「これってどういうこと?」がたくさんありました。特に宗教系の背景がわからない・・・。少し勉強したいと思います。

・これ、リアリズム文学の名作と言われています。そう言われるだけあり、今でも通用しそうなシーンが多々ありました。特にキムチ国の朝のドラマ系なものがいっぱい・・・。人の心の弱みって大昔から変わらないのかもしれませんね。

・今年は今まで読んだことのないフランス文学を読もうと思っています。超有名作品しか読んだことがないので、おススメご紹介頂けると嬉しいです。

・あの、私はエマに自分を投影してませんよー。うちは夫婦円満ですので、あしからず!!!

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2009

05/15

Fri.

20:10:43

天使と悪魔 

Category【海外文学

今日は全世界同時公開の映画がありましたね。



舞台がイタリアということで、これは字幕を頼りにする可能性が高い!ということは、少しは内容を知っていた方がいいかも・・・、と3冊読んだ次第でございます。

天使と悪魔 (上) (角川文庫)天使と悪魔 (上) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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天使と悪魔 (中) (角川文庫)天使と悪魔 (中) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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天使と悪魔 (下) (角川文庫)天使と悪魔 (下) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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映画、すごく楽しみです!
イタリア行きたいんですよねー。

そういえば、角川文庫版の翻訳は、あの越前敏弥さん。
最近英語の勉強本を出されました。

越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)
(2009/02/18)
越前 敏弥

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「福岡でこの本を買うぞ!」と決めていたのですが、あいにく発見できませんでした。次回のチャンスに購入することにします。

週末のソウルは雨だそうですが、映画館に雨は関係ない!!!
みなさんも楽しい週末を。

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2009

04/10

Fri.

11:50:35

パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 

Category【海外文学

文庫本になったということで、購入してみました。

パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 (ソフトバンク文庫 シ 11-1)パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 (ソフトバンク文庫 シ 11-1)
(2009/02/18)
エーリッヒ・ショイルマン

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書き出しをご紹介します。

《編集者まえがき》  エーリッヒ・ショイルマン

 ツイアビは、原地語のまま眠っていたこの話を、ヨーロッパで発表したり、ましてや本にするつもりなどはまったくなかった。
 彼はただ、ポリネシアの自分の国の人びとのためにだけ、この話を考えた。私は彼の了承なしに、さらにはその意思にさからって、これをオー六派の読者に紹介したのである。なぜなら、深く大自然と結ばれているこのひとりの原住民の目が、いったいどのように私たちを、そして私たちの文明を見ているかが、ただ興味深いだけでなく、そこから何かを学びとることは、私たち白人、啓発された人間にとって非常に意義深いものであると信じたからである。



ヘルマン・ヘッセの影響を受けてポリネシアに向った著者は、酋長ツイアビからヨーロッパの文明社会での経験を聞きます。ヨーロッパ人にとって文明とは素晴らしいもの。ところがツイアビは文明を批判的に見ています。お金があることによって生じる物欲、所有欲。新聞や映画など、機械がもたらすものがかえって不自由を作り出していることや、それにより人の心から純粋さが失われていることを指摘しています。

jumee걲point1d この本を読んで jumee걲point1d

・この本は戦後にアメリカで出版されたそうです。大戦後に退廃した街に暮らす人に絶賛されただろうことが容易に想像できます。ドイツ人が書いたというのも、なんとなく「なるほど」と思う点ですね。

・今の私たちの生活において、この本から得られることは、人によってそれぞれかと思います。私は心をまっすぐに、しっかりと意志を持つことを学びました。

・環境問題が取り上げられるようになり、この本にあるツイアビの生活は、以前より受け入れられやすくなっていると思います。自然を破壊しないこと。あるものに満足すること。これ、大切ですね。

久々に雑誌を購入しまして。服欲しい~!ネットブック欲しい~!と物欲たっぷりです。せっかくこの本に出会ったばかりだというのになんということでしょう궼궆
 

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2009

03/21

Sat.

21:25:23

肩胛骨は翼のなごり 

Category【海外文学

今年に入り梨木香歩さんの本をよく読んでいます。今までに出ている文庫本は全て読了しました。もう少し梨木調の作品が読みたくなり探してみたところ、귽긎깏긚 の現代児童文学がおもしろいとの情報がありました。そこで読み出したのが、デイヴィッド アーモンドの作品です。

肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)
(2009/01/22)
デイヴィッド アーモンド

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書き出しをご紹介します。

 日曜日の午後、ガレージで、ぼくは彼をみつけた。ファルコナー・ロードに引っ越した翌日のことだった。冬はもう終わりかけている。かあさんは春を迎えるのにまにあうよう引越しができたといっている。それはともかく、ガレージには誰もいなかった。ぼくだけ。両親はあかちゃんの容態を心配して、ドクター・デスと一緒に家の中にいた。



主人公のマイケルと両親と生まれたばかりの赤ちゃんは、新居に越してきたばかり。実はその子は心臓に病を持っており、やっと退院して新居に来たばかりでした。家にはあれた庭とガレージがあり、それは今にも壊れそうなほど古いもので、中には以前の住人マイヤーズ翁のガラクタがつまっていました。マイケルの隣の家にはミナという女の子が住んでいます。とても聡明な子ですが、学校には通っていません。そのミナとともに、マイケルは不思議な体験をしていきます。

この作品は、1998年にイギリスの児童文学作品を対象としたカーネギー賞を受賞しています。ですが、アーモンド氏はもとは大人の小説も書いていた方ですので、この作品も大人向けの児童文学といった印象があります。その証拠にジュニア文庫ではなく、推理文庫から出版されたようです。

この本を読んで、翻訳って本当に難しいなーと思いました。
欧米文化と日本文化では、会話のやりとりなどが異なります。その成果、親子の会話がちょっと不自然に感じたりする部分があります。(訳のうまい下手ではなく、状況的に jumee걲uuummm1a な感じでした。)ぜひ、原作も読んでみたいところ。きっと面白いはずです。

SkelligSkellig
(2001/09/11)
David Almond

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ちなみに、帯には宮崎駿さんの推薦文がついています。
梨木さんファンも楽しく読めるはず!

jumee걲point1d この本を読んで jumee걲point1d

귽긎깏긚 らしさにあふれるお話でした。見えない世界を信じる力と、科学や医学などの現実性がミックスした作品です。

・表紙の写真に一瞬「これ、本当にカーネギー賞の作品?」と思いました。本国の表紙の方が原作のイメージを引き立てている気がします。

・数時間で読める小説です。すっきりした読了感がありますので、気分転換にもオススメです。


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2008

10/02

Thu.

14:13:39

ぼくのために泣け 

Category【海外文学

アメリカの黒人小説と言えば、『カラーパープル』『アンクルトムの小屋』が有名かと思います。いくつか読んだ中で私が最も好きな作品は、ウィリアム・メルヴィン・ケリーの『ぼくのために泣け』です。

画像 008
  
 アマゾンに画像がないので、こちら貼ります。
 『ぼくのために泣け』

 私が持っている集英社文庫版は昭和52年の3刷です。
 1977年。31年前ですわ。




書き出しをご紹介します。

 

その女の子は家の前の庭にしゃがみ込んで、真鍮のスプーンで地面を掘っていた。そこは海のつもりで、向こうには短い黄ばんだ草のはえた島々があった。着ている赤と白の縞柄の服がだぶついているために、両脚はかくれて見えない。春はまだ浅かったかが、彼女ははだしだった。足の先が裾から突き出ているのでわかる。その男の姿に彼女はまだ気がついていない。男は馬にのってリバティ街をこちらへやってくるところだった。がっしりした肩。着ているダスター・コートが馬の臀をおおってひろがっている。 



ケリーはこの本のはじまりで、「いわゆる黒人問題の解決策や解答が、その作品に含まれているのではないか、と読者から往々にして期待される」と語っています。確かに読者のわれわれも、どこか黒人問題と結びつけようとするのかもしれません。そしてこの時代のアメリカの作家の多くがそうであるように、バックグラウンドへの強い愛情とアイデンティティ溢れる作品が多い。黒人作家の作品にもそんな期待が込められているのではないでしょうか。多くのその点、私はよくわからない子供時代に読んだこともあり、純粋にお話として読むことができたため、ラッキーだったかもしれません。

『ぼくのために泣け』は、いくつかの短編が鎖のようにつながる小説です。登場人物が関連し、そして育っていく。最後まで読むと、なにか永い月日が経ったかのような気がします。それぞれの登場人物の抱える心の問題や葛藤がとても響きます。

人種ではなく、人としての心ありきの小説です。そういう点では、サローヤンの作品に近いものを感じました。

ところで、スゴイものを発見してしまいました。これを見てください。

ず?

左から3行目、下から6番目「ず」が横に転んでます jumee☆surprise8
こんな大胆な誤植、昭和ならではですね(笑)


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2008

09/17

Wed.

16:34:17

わが名はアラム 

Category【海外文学

引越の荷物を片付けていたのですが、ついこの本を読んでしまいました。

わが名はアラム (ベスト版 文学のおくりもの)わが名はアラム (ベスト版 文学のおくりもの)
(1997/12)
ウィリアム サロイヤン

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画像が無かったので、晶文社のものを貼り付けましたが、私が読んだのは1987年に出された福武文庫版で、翻訳は三浦朱門さんのものです。

これ → 我が名はアラム (福武文庫―海外文学シリーズ)

W・サローヤンは私の好きな米作家の一人です。
アルメニア移民で、カリフォルニア生まれのサローヤンですが、彼の少年時代を想像させる作品が、この『我が名はアラム』と、『ヒューマン・コメディ』です。共に少年が主人公で、人生や社会とはなにかが語られています。

サローヤンの作品に出会ったのは、中学生の頃でした。その時、まったくアルメニアの知識はなかったのですが、とても懐かしく読んだのを覚えています。少年少女が主人公であったことが大きいと思いますが、大家族が登場したり、絆やつながりの強さが、昔の日本に似通った点があったからではないでしょうか。

書き出しをご紹介しましょう。

 「美しい白馬の夏」

 ずっと以前、僕がまだ九つで、この世が素晴らしく、人生がまだ美しく不思議な夢であった頃、僕以外のものが皆、少しキ印だと思っていた従兄のムーラッドが、朝四時に家に来て僕の部屋の窓をたたいた。
「アラム」
 僕は飛びおきて、窓の外を見た。
 僕は自分の目が信じられなかった。
 まだ朝ではなかったが、丁度夏で日の出が近く、それが夢でないことがわかるくらいに明るかった。
 


ここで使われている「キ印」とは、crazyの意味です。20年前の福武版はこのような訳になってます。
書き出しだけでも、アラムとムーラッドはアルメニアのいたずらっこだというのが伝わってきます。読み進めるうちにわかりますが、このアルメニアの人たちはとても純粋なのです。精神が澄んでいるのが伝わってくる。ガローラニヤン家の人々は、きっと力強いきれいな目でまっすぐ前を見て生きていたんだと思います。

LocationArmenia.png
 アルメニアの位置、ご存知ですか?
 はっきりと思い出せなかったので調べてみました。
 サローヤン時代、アルメニアは混乱期にありました。
 よって多くの移民を出し、移民たちは故国に戻る事も
 ままならないまま、遠い故郷を夢見ました。


地図をもう少し拡大してみましょう。



北にグルジア、西にトルコ、南にイラン、東にアゼルバイジャンに取り囲まれた国がアルメニアです。ノアの箱舟が漂着したアララト山は、アルメニア国内に位置します。首都はエレバン、公用語はアルメニア語です。

サローヤンの本を読むうちに、アルメニアがどんなに美しいところなのか、アルメニア語がどんな響きなのか、知りたくなりました。81年に無くなったサローヤンは、故国を見る事なく世を去ったのだと思います。帰りたくても、帰れない。祖国を失った悲しみと、それでも強く生きていくという希望が見える作品です。

アルメニアについて、公式サイトはこちらです。
http://www.armenica.org/

My Name Is AramMy Name Is Aram
(1991/07)
William Saroyan

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2008

07/10

Thu.

07:19:19

インド夜想曲 

Category【海外文学

須賀さんの翻訳本を読みました。

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
(1993/10)
アントニオ タブッキ

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タイトルを見て、「インドには興味ないんだよー」という方も、だまされたと思って手にとってみて下さい。帯には「旅行記」とありますが、私はやっぱり小説だと思います。舞台はインドですが、これはヨーロッパ文学だと強く感じました。


まずは書き出しをご紹介しましょう。

 タクシーの運転手は先のとがったひげをはやし、ネットでまとめた長い髪を白いリボンでしばっていた。シク教徒だろう、と僕は判断した。ガイド・ブックに出ているとおりの格好だったからである。僕のガイド・ブックは、ロンドンで買ったIndia, a travel survival kitという本で、インドについて、かなりエキセントリックで、一見なんの役にもたたぬような情報が載っていて、これを求めたのは、なによりも好奇心からだった。この本の実用性に気づいたのは、ずっとあとになってからである。



この本は一瞬迷路に迷い込んだような錯覚を引き起こす部分が多々あります。特に終わりの数章は、いきなり話が解決するかのように見えますが、読後にやはり謎が残るのです。全体12章のイメージをそれぞれが「これがタブッキ・ワールドか!」という強い謎に包まれています。

私が理解するところでは、僕はインドで失踪した友人を探しに、スーツケース一つ手にインドへ渡ります。ボンベイ、マドラス、ゴアを巡る旅。旅の中での人との出会い、インドと言う土地の不思議さ、そして僕が一体何者なのか、わからないままぐいっと小説の中に引き込まれてしまうような1冊です。驚くのは、作者はイタリア人ですが、登場人物の僕の周りにはヨーロッパが凝縮されています。イギリス、ポルトガル、フランス、イタリア、そして舞台はインド。謎が多くて、まるで霧のようなベールに覆われているような曖昧さに、この詰め込まれた世界観が小説のスパイスとなって味を引き締めています。サスペンスのような、探偵もののような、なんとも不思議な小説。ただはっきり言えるのは、強い後味を残す、かなり濃い味の小説だという事です。五感で読む小説、というところでしょうか。

タブッキという人は、須賀さんのエッセイに何度も顔を出すイタリア人のうちの一人です。須賀さんはタブッキの小説を高く評価されており、特にこの『インド夜想曲』は、序文から結末まで、全ての構成、文体、流れを絶賛されています。

須賀さんが長年を経て翻訳したいと思った気持ちが伝わる1冊です。タブッキ、もっと読んでみたいなぁ。こんな濃い、深い小説は久しぶりでした。大満足。

映画も是非見てみたい。あ、フランス映画なんですね。

インド夜想曲インド夜想曲
(2003/10/31)
ジャン=ユーグ・アングラード

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2008

07/07

Mon.

21:50:53

愛の妖精 

Category【海外文学

愛の妖精 (中公文庫)愛の妖精 (中公文庫)
(2005/06)
ジョルジュ サンド

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この本も須賀敦子さんの全集で知りました。

『La Petite Fadette』は、日本では『愛の妖精』として紹介されていることが多いのですが、フランス語を直訳すると、「ちいさなファデット」という意だそうです。須賀さんが好きな文体との事で読んでみたのですが、私もこの本がとても気に入りました。

私は中公文庫版を購入しましたが、他にも岩波文庫版などもあります。

愛の妖精 (岩波文庫)愛の妖精 (岩波文庫)
(1959/01)
ジョルジュ サンド宮崎 嶺雄

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中公文庫版を選んだ理由は、岩波版よりも読み易いとの評からです。かつて(1960年代)に旺文社から出されていた「あの」篠沢教授の訳が、手を加えられて中公文庫から再販されたようです。

ちいさなファデットの物語は、麻打ち男の語りの形で進められます。(中公文庫版では、序文はこの麻打ち男のくだり以外は省略されています。)

では、書き出しからどうぞ。

 コッス村のバルボおやじは暮らしむきが悪くはなかった。その証拠に村会議員になっていた。畑を二つ持っていて、家族の食べ料になっていたし、おまけにもうけも上がっていた。自分の草刈場から荷車が何台もいっぱいになるほど、まぐさがとれ、小川のそばにあって少々あしがじゃまになっている分を除けば、これはこの土地で第一等といわれるまぐさだった。



アンダーバーの部分、本文では点が打たれています。これが結構読みにくかったかも・・・。
ひらがなが続く時に、植物名にこの点が打たれているのですが、これは要らないような気がするなぁ。

このあと直ぐ、バルボおやじの家に男の子の双子が生まれます。兄はシルヴィネ、弟はランドリと名付けられます。ファデットはこの二人と同じ村に住む女の子。物語は双子とファデットの成長と愛と葛藤が豊かに綴られています。

ファデットは魔女と呼ばれるおばあさんの元で育てられ、粗野で貧乏な女の子です。まるで男の子のように野原を駆け回り、村のみんなからも疎遠にされています。双子もファデットとは距離を置いてくらしているのですが、ある日、ランドリとファデットが出会い、ランドリは本当のファデットの心を知ります。実はファデットは心優しく、信心深く、知識に溢れる少女だったのです。まわりの噂と形振りを構わないファデットの日常が、その真の姿を隠していたのでした。

ファデットはとてもかわいい魅了的な顔をしているのに、着飾ることを知りません。しかしランドリは、ファデットとの会話から、心の美しさ、この本で言えば「正しいキリスト教徒」らしさを見抜き、その人柄に惹かれていきます。まるで人間としての美徳とは何かを教えられるような文章が続きます。

シンデレラ的でもある恋愛小説ですが、舞台が豊かな農村であるせいか、派手さはありません。でも心に残る恋愛物語です。オースティンを思い出す部分もありました。舞台は19世紀初のフランスです。ヨーロッパの田園風景を楽しみたい方に是非おススメしたいと思います。

ところで読んでいる最中、ずっと「この本を原語(フランス語)で読みたい!!」という欲求にかられていました。なぜなら、音がとってもきれいなんですよ。例えば、ファデットの本名はフランソワーズ。愛称はファンションです。ランドリは愛情を込めて、「ファンション・ファデ」と呼ぶのですが、きっとカタカナでは表せない発音なんだろうなー。Fの音ってきれいだから、きっと「ファンション・ファデ」という発音もきれいな音なんじゃないかなー、音が分かれば、きっと物語の理解力も深まるだろうなー、などなど。私、音フェチなんですよね汗2

ところでジョルジュ・サンドと言えば、ショパンの恋人だったとか、恋多き女、フェミニストとして知られているので(と、私はイメージしてました)、この作品は結構以外でした。とっても透明感のあり、清らかとか爽やかという言葉が似合う一冊です。

こういう純粋な恋愛小説、たまに読むと心が洗われますね。

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2008

05/22

Thu.

09:36:24

イギリス名詩選 

Category【海外文学

昨日の記事を書いてから、「あ、忘れてた!」とお気に入りの一冊を手に取りました。


イギリス名詩選 (岩波文庫)イギリス名詩選 (岩波文庫)
(1990/02)
平井 正穂

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今日のタイトルはですね、私の好きな詩からjumee☆shy2


A Red, Red Rose - Robert Burns

Oh my luve is like a red, red rose,
That's newly sprung in June:
Oh my luve is like the melodie,
That's sweetly play'd in tune.

As fair art thou, my bonie lass,
So deep in luve am I;
And I will luve thee still, my dear,
Till a' the seas gang dry.

Till a' the seas gang dry, my dear,
And the rocks melt wi' the sun;
And I will luve thee still, my dear,
While the sands o' life shall run.

And fare thee weel, my only luve!
And fare thee weel a while!
And I will come again, my luve,
Tho' it were ten thousand mile!



これはスコットランドの詩人、ロバート・バーンズの有名な詩です。ロバート・バーンズって誰?というあなたも、“蛍の光”の作者だよ、と言えばわかるかも。

学生時代に英詩を学びましたが、歳を取るごとに一節一節が身にしみるようになりました。
岩波文庫の英文学関連本はお気に入りが多いです。

これとか、

対訳 キーツ詩集―イギリス詩人選〈10〉 (岩波文庫)対訳 キーツ詩集―イギリス詩人選〈10〉 (岩波文庫)
(2005/03)
宮崎 雄行

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キーツと言えば、“Ode To A Nightingale”ですよねちな♪
ロマン派の代表格です。名詞選の方には、お友達のシェリーの作品も収録されています。

あとこれとか、

対訳 ワーズワス詩集―イギリス詩人選〈3〉 (岩波文庫)対訳 ワーズワス詩集―イギリス詩人選〈3〉 (岩波文庫)
(1998/09)
ワーズワス

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英詩を知らなくても、イギリス旅行をした事がある方、特に湖水地方を訪れた方なら名前を聞いたことがあるでしょう。ワーズワースの作品の中では、私は“The Daffodils”が一番好きです。とても美しい詩ですので、下に折りこんでおきます。


これも

対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選〈2〉 (岩波文庫)対訳 ジョン・ダン詩集―イギリス詩人選〈2〉 (岩波文庫)
(1995/01)
ジョン ダン

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何度も読んでは浸ってました。恩師のダンの授業は最高でした。形而上詩人の先駆者が書いた“The Flea”のコンパスの比喩はとっても有名です。


これも

対訳 シェイクスピア詩集―イギリス詩人選〈1〉 (岩波文庫)対訳 シェイクスピア詩集―イギリス詩人選〈1〉 (岩波文庫)
(2004/01)
柴田 稔彦

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知らない人はいないでしょう!私はドラマよりソネットが好きだったりします。

ということで、英詩に興味のないみなさま、スミマセン汗とか

岩波文庫の英詩集は、単行本の気軽さなのに、本文としっかりした訳がついています。
私は一人旅の時は詩集を1つ持ち歩くようにしていて、大体上の中から1冊選んで持って行き、旅先でパラパラと読んだりします。

ハッキリと言える事は、これらの英語はちょっと特殊。「英語の勉強に英詩を読みます!」というのはちょっとハードルが高いかも。ちなみに私の本たちは「みっちり」書き込みしてありますので、英語を忘れた今でも楽しめてます。そういえば、英詩を読んでて良かった!と思った事もありました。時々新聞なんかでシェークスピアが引用されてたりして、状況がスンナリわかった時は嬉しかったかも。文化背景を知る、と言う意味で英詩を読むのもよいかもしれませんね。

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