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2010

11/30

Tue.

22:12:07

旅のラゴス 

Category【日本文学


旅のラゴス (新潮文庫)旅のラゴス (新潮文庫)
(1994/03)
筒井 康隆

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書き出しをご紹介します。

集団転移

 放浪する牧畜民族の集団に加わるのは初めての体験だった。彼らは老人や女子供を含め約四十名のグループで、五十頭ほどのスカシウマ、百七十頭ほどのミドリウシをつれ、ビタハコベなどの生えている自然の牧草地を求めて移動し続けていた。冬が近づくというのに彼らが北へ北へと旅し続けているのは、リゴンドラという北方の都市で牛馬を売るためである。おれは南への旅だった。リゴンドラの南西数キロの牧草地で彼らに出会い、ひとり旅が心許ないため彼らのグループに加えてもらったのだった。彼らと共にいったんリゴンドラまで戻らねばならなかったがそれはしかたがなかった。南方諸都市は旅びとの扱いが手荒く、町によっては旅びとというのは北方から奪われるための金を持ってやってきて、自分たちに殺されるだけの存在だと思っている連中ばかりがいたりするのだ。
 おれは都会育ちだから牛馬と寝起きするのは初めてだった。スカシウマもミドリウシもおそろしく巨大なのでおれは最初のうちどうしても彼らに馴染むことができなかった。ムルダムの一族は飼育しているけものたちと同化していた。都会の人間が競技用や乗物用に飼っているけものたちを馴らすためにはあくまで飼い主として感情移入し、彼らを従わせる方向へとその心理を導くのだが、ムルダム一族はそうではなかった。けものたちに同化するため、四つん這いになったりもするのだ。一族の中で、子供たちにけものとの同化を教育しているのはヤシという若い娘だった。おれは自ら希望して子供たちに加わり、彼女から教えを受けることになった。



SFの印象が強い筒井康隆氏ですが、この小説はファンタジー向きの作品だったように思います。上の書き出し部に登場するスカシウマやミドリウシは実在しないはず。

この本の主人公がタイトルにあるラゴスという青年です。ラゴスは自らを「おれ」と呼びワイルドな印象を与えるタイプですが、実に博識で行動力のある人です。ラゴスの旅は実家のある北方の町から始まり、南方の町に到着してそこで長い時間を過ごしますが、また折り返して北方に戻ります。この間実に30年。

旅を続けるラゴスの前には、いつもいつも新しい町で新しい出会いがあり、事件とも言える出来事に巻き込まれる。行く先々に人生のターニングポイントがあるような旅なのです。奴隷になったり、恋をしたり、歴史書を何年も読み漁ったりと、ラゴスは自分の心の赴くがままに生きている。まるで冒険小説のようなワクワク感に一息に最後まで読みたくなるはずです。

30年もの旅ですから、ラゴスも徐々に老成していきます。その過程がなんとも魅力的。読み進むにつれ、ラゴスがスカシウマと同化するがごとく、読み手もラゴスの旅に同化していきます。この小説の人々は、心を同化させて瞬間移動する技術がある。そして空を飛んだり、人の心を敏感に感じ取ったりと、心の芯に触れるようなエピソードがたくさんあります。ふっと心が軽くなるような小説です。


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・一生ってなんだろうね、と考えてしまいました。自分に与えられた道をただ真摯に進んでいく。ラゴスの旅にそんな印象を感じました。

・心を同化させるって素晴らしいことですね。人と人のつながりにも、相手を思い図って同化できるほどの心のつながりがあればいいのに。



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2010

11/29

Mon.

17:08:42

永遠の旅行者 

Category【日本文学


永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)
(2008/08)
橘 玲

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書き出しをご紹介します。

 夢がどんなものなのか、知らない。生まれてからいちども夢を見たことがないからだ。
 眠りはなにもない空洞だった。
 いや、ほんとうは皆と同じように夢の世界を旅しているのだが、なにひとつ覚えていないのかもしれない。
 夢ってなんだろう?子どもの頃からずっと不思議だった。

 目覚めた直後の曖昧な時間が好きだ。それは、指先で軽く触れただけでこわれてしまう繊細なガラス細工に似ている。
 重いカーテンの隙間からわずかに朝の光が差し込んで、ベッドに淡い光の縞ができている。それかがどれほど美しくても、視線を合わせてはいけない。ほんのすこし気を緩めただけで、世界はあっけなく崩壊してしまうだろう。



上下2巻。タイトルからはなんだか旅行記のような印象をうけますが、著者はあの橘 玲さん。今回は税金がキーワードとなった小説です。

真鍋は今、ハワイの知り合いのコンドミニアムの離れに暮らしながら、決して定住することなく世界を動きまわてっいる。それはたんなる趣味の旅行ではなくて、日本の国籍を維持しながら一歩日本の外に出て「非居住者」という身分となることに重きをおいています。なぜそんなことをするのかというと、税金から逃れるためです。

真鍋はもともと大手法律事務所に勤める弁護士でした。しかし、真鍋には弁護士としての生活に意義を見出せなかった。あっさり退職し、世界を海外へと求めた真鍋。彼がハワイでのんびりしているところへ、変わった話が流れ込んできます。それは、ある一族の財産贈与の話でした。クライアントは療養中の老人で、彼の資産を実の息子ではなく、孫娘に譲りたいという。そしてその際には一円も日本国に税金を納めずに済ませたい。

一風変わった依頼と、次々に登場する人物の魅力に真鍋はこの事件を解決すべく、日本とアメリカを行き来して一つ一つの糸口を結んでいくと言うお話です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・私も今の身分は「非居住者」。思えば税金のこと、なんにも考えずに暮らしてきました。万が一私の身に何かあっても、譲る財産なんてないしなーと思ってましたけど、それ以外にもいろいろと知っておくべきことはたくさんあるようです。

・小説としての流れより、税金のトリックの話の方が楽しめたように思います。



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2010

11/26

Fri.

10:45:00

剣客商売 

Category【日本文学


剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)
(2002/09)
池波 正太郎

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書き出しをご紹介します。

女武芸者

 冷たい風に、竹藪がそよいでいる。
 西にひろがる田圃の彼方の空の、重くたれこめた雲の裂目から、夕焼けが滲んで見えた。
 石井戸のあたりに先刻から、鷦鷯がしきりに飛びまさってい、澄みとおった声でさえずっているのを、この家の若い主は身じろぎもせずに眼で追っていた。
 まるで巌のようにたくましい体軀のもちぬしなのだが、夕闇に浮かんだ顔は二十四歳の年齢より若く見え、浅ぐろくて鞣革を張りつめたような皮膚の照りであった。
 若者の、濃い眉の下の両眼の光が凝っている。小さくて敏捷なみそさざいが数羽、飛び交っているうごきを飽きもせずに見入っているのだ。
 台所から根深汁(ねぎの味噌汁)のにおいがただよってきている。



剣客商売はシリーズとして16巻まで出ています。これはその1巻目。

親子で剣客となった秋山一家。父の小兵衛は修行から戻った息子大治郎を近所に住まわせ、道場を開かせるもなかなか弟子はよりつかない。大治郎はもともと父の仲間だった男とともに、江戸を離れて修行を積んできたのですが、いざ江戸に戻ると父は六十を越えて下女のおはるに手を出して、剣客どころかすっかり引退生活で色の道におぼれています。小兵衛はおはるとともに引退のような生活を送っているのですが、江戸の街に事件は尽きません。あれこれ仕事が舞い込んでくる。

おはるに小舟をこがせて、小兵衛は息子を見舞ったり、江戸城下へ赴いたりと時に忙しく立ち回っています。ある日耳に届いた話によると、江戸を取り仕切る田沼意次になんと庶子がいると言う。それも女剣士で、自分より強い男とでなければ結婚しないとか。その女剣士三冬に婚礼の話が舞い込むのですが、それと同時に身辺怪しい影がつきまとう。小兵衛はこの事件を解決すべく、曲者を退治します。

表紙をよくよく見てみると、左側にかしこまって座っているのが恐らく大治郎で、女の膝に頭をあずけて横になっているのが小兵衛でしょう。耳掃除をしているのがおはるかな?

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・寒くなるとなぜか時代小説が読みたくなる。江戸のお話は食べ物の話や町人文化の話やらが華やかでいいですね。

・シリーズがまだまだ続くので、少しずつ読んでみたいと思います。






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2010

11/25

Thu.

10:04:01

空ばかり見ていた 

Category【児童文学


空ばかり見ていた (文春文庫)空ばかり見ていた (文春文庫)
(2009/01/09)
吉田 篤弘

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書き出しをご紹介します。

 その名にふさわしく、ホクトさんは七つの腕を持っていたのだと思う。あるいは七つの鋏と言うべきか。もちろん、本当に鋏が七つ用意されていたわけではなく、たぶん愛用の一本を何度も研ぎなおして使っていたのだろう。
 おでこのあたり、耳元、襟足、頭頂部、側面、全体を整えるとき、それから宙で一瞬止まるとき― それぞれの場面での音やら静けさと共に、鋏はそのときそのときの表情を持っていた。それは金属が反射して輝くというよりも、mくしろ、微熱を帯びて自ら発光しているように見えた。
「ここが、つむじ」
 ホクトさんは、私の頭のてっぺんを人差し指でおさえ、「君のすべての中心」と、子供には難しいことを言った。



『それからはスープのことばかり考えて暮らした』があまりにも楽しかったので、同じ著者の作品を購入しました。

この本は風来坊のように自由に旅をしながら床屋として髪を切るホクトさんの物語です。彼に関連ある短編がいくつか繋がっています。ホクトさんはもとはフランスでパントマイムの勉強をしたり、天井画を書いたりしていたのですが、床屋1代目父親が亡くなり日本へ戻ってきます。そしてそっくりそのまま床屋2代目として店を継ぐのですが、何年かたって少年が街へ戻ってみるとホクトさんの床屋はおやすみになっていた。

おやすみの間、床屋のホクトさんは旅にでる。それぞれのお話が、この本のモチーフとなっているマアトというお菓子のようにふんわりした印象があります。マアトはとてももろい天使の羽のようなお菓子なんだそうです。一見ウェハースのようで、口に運ぶとすぐに溶けてしまうような繊細さ。この小説も琴線に触れるとさっと消えてしまいそうなエピソードがたくさんあります。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・やっぱり好きです、吉田篤弘さんの小説。他にも読んでみたいなぁ。

・北欧だったりパリだったりを連想させるんですが、それは街の賑やかな姿ではなくて、ひっそりと佇む石畳に囲まれた街角といった感じ。いいなぁ、こういうの!


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2010

11/24

Wed.

11:25:41

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 

Category【随筆・エッセイ


僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
(1997/08/20)
中島 らも

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書き出しをご紹介します。

 保久良山

 JR摂津本山駅の裏手に保久良山という山がある。山というよりは丘の大きなやつといったほうがいいだろうか。
 アタマに保久良神社の鳥居をのっけてチンと丸まっているさまは、何か“よしよし”と頭をなでてやりたくなるような、そんなかわいらしい山である。
 本山第一小学校に通っていたころは、体育の時間によくこの山に登らされた。
 ほいっ、ほいっ、と頂上まで行って、てっぺんにある神社の境内でひとやすみしてから、上りとはうってかわって楽な下り道をおりていく。学校に着いて、それでちょうど五十分という行程である。
 休みの日にはこの保久良山から尾根づたいの金鳥山へ出、さらにその奥へ分け入って「水晶狩り」をした。
 注意深く見ていると、山道をそれたところの石英の巨岩のくぼみに、小さな水晶が何本かヒンヤリとした風情でかしこまっている。



『ガダラの豚』を読んだら、らもさんのエッセイも読みたくなりました。懐かしい1冊です。

新聞に掲載されていたものをまとめたものなので、いくつもの短いエッセイが収められています。中には連載のように数回にわかれて綴られているのですが、その殆どがらもさんの小学生から大学生時代までのお話。神戸や大阪で過ごした日々の記録になっています。

らもさんと言えば、あの超有名な灘校の出身です。なんと8番で入学したといいますから、神童ですよね。ところが勉強以外のことがおもしろすぎて、成績はどんどんと落ちていく。折りしも大学入試の頃は学生紛争の時期でもありました。東大が入学試験を行わないという、今では想像できないような時代です。入試がないから、勉強がどんどんと遠ざかっていく。酒をあおり、音楽にはまる日々。

60年代、70年代のお話のはずなんですが、今でも「あるある!」と共感できるのが不思議です。昭和に青春期を過ごした人にも、平成生まれの人にも、子供心っていうのは時代に関係ないのかもしれませんね。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・このエッセイの中にはいくつもの心に残るフレーズがあり、よく読み返しました。まさに今の自分にピッタリだと思える言葉に何度励まされたことでしょう。

・小・中・高・大とどんどんと大人になっているのに、心はいつまでも子供のような好奇心で満たされている。私もそんな生き方がしたい。



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2010

11/23

Tue.

09:19:58

風車祭 

Category【日本文学


風車祭 上 (角川文庫)風車祭 上 (角川文庫)
(2009/10/24)
池上 永一

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書き出しをご紹介します。

プロローグ

 今日の島は朝から賑やかだ。旧暦の九月七日の始まりは、木々の無数のざわめきと、いつになく大きく鳴り響く潮騒、そして島唄と三線の微かな音色の重なりだった。明けの爽やかな風が海から届いてくる。白と煉瓦色のストライプの屋根に座ったシーサーの雄が朝の恵みをまっさきに招き入れた。まだ島人のほとんどは眠りについたままだ。新しい火の微かな予感。そしてそれが希望に変わったとき、一陣の風が島を駆け回り、島人に目覚めの時がやってきたことを告げる。
 明けようとする少し前、市内の新川に住んでいる仲村渠フジが目覚める。九十七年目の良き日の始まりだ。彼女はゆっくりと庭に下りる。肺の中身を新鮮な空気に交換すると、彼女の意識がさえわたってきた。微かに聞こえていた三線の音色は、祝いのメロディだ。風も木も、飛び立つ白鷺の群れのざわめきも、三線の素朴な音色と相まって、心地好さを増していた。島が輝きに満ちたとき、朝のざわめき全体が収斂されて、祭りの前奏曲となった。視の夜、そして再生の朝を迎えた島は、沖縄最大の生命の祭りへと、高まっていく。



上下2巻。
この本も2chの「小説まったく読まないんだが初心者におすすめの小説教えろ 東野圭吾とかいうの読んどけばいいのか?」に紹介されていた本です。この本を読んで、ますます2chの情報網ってすごいなーと思った次第。

風車祭と書いて、カジマヤーと読みます。この祭りは旧暦の9月7日に行われる97歳の長寿の祭りだそうで、風車をオープンカーにつけて町中を練り歩くものなんだそうです。

登場人物はこれからカジマヤーを向かえようというおばあちゃんのフジ。この一族は長寿の家系なのか、フジを筆頭に80代の娘トミ、60代の孫ハツ、40代ひ孫美津子と4世代が一つ屋根の下に暮らしているという驚異的な一族です。トミが実質的に家族の面倒をみているのですが、母と娘にいいように使われている感じ。トミのところへは高校生の男の子武士がよく遊びに来ます。沖縄の高齢者というのはみなさん、こうなのでしょうか。伝統や風習を非常に重んじていて、先祖や土地の魂への祈りを捧げるシーンが多く見られます。武士はそんなトミのガムランのような祝詞が大好きで、この日も聞きに来ていました。祝詞が始まると、どこからか臭気が近づいてくる。90代のフジはいち早くその匂いに気づき、逃げていきます。どうやらマゾームノーナという妖怪火が近づいてきたようです。

ところが武士はその気配がわからない。それどころか、どこからか話しかけられている声すら聞こえてきます。トミが施した魔よけでその時は難を逃れますが、じきにまたこのマゾームノーナと再会することに。フジは96歳とはいえとんでもない婆さんで、武士からお金をくすめるし、トミへの贈り物は自分のものにしてしまうしと元気すぎるのが大問題ですが、しかしフジの頭の中にはたくさんの石垣の歴史がつまっています。彼女が見聞きしたことは、たいてい覚えている。フジは武士に入れ知恵をして、霊が見える方法を教えておもしろがります。何といってもフジは「パーッと楽しくて、ザーッと血が流れて、ワーッと泣けて、スカッと気分がよくなって、ついでにゲラゲラ笑えること」を娯楽として長生きの糧としています。そんなフジの策略を知らない武士は、どんどんとマゾームノーナへの世界へ足を踏み入れていく。

武士とマゾームノーナとの出会いには、同級生の妹郁子がいました。郁子はたまたま路上を歩いていたのですが、武士とともにマゾームノーナを見てしまう。彼らが見たのは巨大な豚と美しい琉球衣装を身につけた娘でした。豚の名はギーギー、娘はピシャーマ。ピシャーマは自分の結婚式の日、突然石になってしまい、自分が死んだかどうなのかもわからないと言います。それから武士と郁子はマゾームノーナへの世界へどんどん深入りしていく。

沖縄には「マブイを落とす」という表現があるそうです。命とは違い、魂に似たようなものなんでしょうか。しかしマブイを落としてしまうと、命にかかわりがある。異界のものに接すると、マブイを落としてしまう。話だけですとなんとも恐ろしいんですが、登場人物の破天荒なキャラクターのせいか笑いが絶えません。

沖縄の言葉のテンポ、おばあ達の信じられないほどに元気な姿、青春真っ只中の高校生、そして女の強さが心地よい。そしてフジの信念どおりに、血は流れないけど、パーッと楽しく、ワーッと泣けて、スカッと気分がよくなって、ついでにゲラゲラ笑える小説です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・都会が舞台の小説にはない、地域や家族が太いパイプで繋がっているようなお話でした。キャラクターがどれもありえない独特さを秘めています。

・思わず沖縄に行きたくなってしまう小説です。神秘の島、石垣!

・最後までわくわくが続きます。途中、笑えて泣ける場面が何度もあります。スカッと気分転換したい方、なにかに落ち込んでいて元気がでないかた、是非読んでみて。おばあの姿に「自分、こんなんでいいのか!?」と自問自答したくなるはずです。


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2010

11/22

Mon.

09:42:18

中村工房 

Category【マンガ


中村工房 (1) (ガンガンWINGコミックス)中村工房 (1) (ガンガンWINGコミックス)
(2002/11)
中村 光

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今や大人気の『聖☆おにいさん』の作者によるマンガです。全3巻。初期の作品のようで、『聖☆おにいさん』のタッチとはまた違う絵が新鮮でした。

この頃マンガが読みたくてたまらない。それも笑えるマンガが読みたい。私の好みはちょっぴりシュールでナンセンスな短編マンガなんですが、昔は『伝染んです』『『ギャグマンガ日和』『和田ラヂヲのここにいます』をなんどもむさぼり読んでました。ああ、なつかしい。

古いものをもういちど購入するのも良いかなーと思ったのですが、この本が面白いと聞き、早速購入。私好みの短編がいくつかあり、途中に作者が登場する数ページのマンガが登場したりもして、コロコロと場面が変わるのが読みやすかったです。

でも、ギャグという意味では、ちょーっと弱いかなー。ただ密林の評価は良いようですので、ツボが合えば大爆笑になるのではーと思います。登場人物にはかっぱや一番星(彦星にもなる)と人間ではないものも出てきて、ちょっぴり『伝染るんです』な感じ。コミック掲載時には、作者手作りのマグカップ(ご実家が陶芸窯のようです)をプレゼントするという大企画を行っていたようで、それに関連するご家族のお話は笑えました。

3巻目で突然連載ストップの話題になるのですが、もう少し続けて欲しかったなーというのが正直な感想。でも、これが続いてたら、『聖☆おにいさん』はないのかも、と思うと無理強いはできません。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・『聖☆おにいさん』とは完全に違った印象のマンガでした。ギャグの勢いというかテンポも違うし、波があるように感じられました。

・でも、絵がかわいい。かっぱ、好きです。



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2010

11/19

Fri.

09:48:21

かもめ食堂 

Category【日本文学


かもめ食堂 (幻冬舎文庫)かもめ食堂 (幻冬舎文庫)
(2008/08)
群 ようこ

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書き出しをご紹介します。

「かもめ食堂」はヘルシンキの街なかにひっそりとある。大きな看板も出しておらず、ドアのところに「かもめ食堂」という日本語と、フィン語で「ruokala lokki」と小さく書いてあるので、それとわかるようになっている。以前、ここは地元の太った名物おばさんが経営している食堂だった。彼女が急死してから、半年以上、店は閉められたままになっていて、周囲の人々はいったいどうなるのだろうかと気にしていた。そしてある日、店の中を片づけていると思ったら、しばらくして東洋人の女の子がいつも一人でいるようになった。近所のおじさん、おばさんは興味津々だった。
「『かもめ食堂』って書いてあったけど、行ってみた?」
「窓から中をのぞいたら、子供がいたんだ。女の子だ。他に誰かいるのかと見ていたんだけど、誰もいない」



先に映画の『かもめ食堂』を見て、それ以来お気に入りの作品となりました。あのほんわかした流れは本当に癒されますね。登場人物もみごとで、あの女優さんたち以外は考えられないというか、今でもヘルシンキに行けば小林聡美さんのようなサチエさんがいるような気がしてなりません。

何度も映画を見ているのに今回改めて本で読んでみようと思ったのは、どこかのレビューで「映画と本はまた世界が違っています」的な一言を目にしたから。たしかに映画と書籍とでは若干のことなる部分がありますが、私は映画の登場人物を頭に思い浮かべて読みましたけど、全く違和感はありません。トンミ君はやっぱりブロンドのあの青年がぴったりだと思うし、ミドリさんは片桐はいりさんしか思い浮かぶ人はいないし、もたいさんじゃなくちゃマサコさんは演じられない!と改めて実感した次第。

映画の中でミドリさんがサチエさんの「いらっしゃい」の一言が素晴らしいというシーンがあるのですが、それは映画版だけでのお話なんですね。映画は北欧の美しい家具や食器に目がいっちゃうんですけど、本の中ではそれぞれの人柄がぐっと温かみを増して感じられるようでした。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・映画の中では、シナモンロールがとても重要なポイントをなしているのですが、本書ではそれほど特別なものとしては書かれていません。でも、実際にシナモンロールが焼かれているところを想像すると、そのおいしそうな香りに惹かれて、ついついお店に入っちゃいそうですよね。

・人が握ってくれたおにぎりって、格別おいしいということを思い出しました。ソウルに来てからおにぎりを食べることも、作ることもなくなってしまいました。久々に母の握ってくれたおにぎりが食べたくなりました。


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2010

11/18

Thu.

07:51:44

ガダラの豚 

Category【日本文学


ガダラの豚 1 (集英社文庫)ガダラの豚 1 (集英社文庫)
(1996/05/17)
中島 らも

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書き出しをご紹介します。

プロローグ

 それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。
 すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの関わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。
 さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。
 悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
 そこでイエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
(マタイによる福音書第八章二十八~三十二)


「今日は闇が重たいな」
 本堂へ細く廊下が延びている。隆心老師は曇った夜空を眺めて言った。
 それが独り言なのか、弟子の自分に向けられた言葉なのか、恵心にははかりかねた。
 たしかに濃い闇だった。
 早春の深夜一時。思わず襟を寄せ合わせるほどの肌寒さである。にもかかわらず、闇そのものにねっとりとした密度のようなものが感ぜられた。その思い空気の中を、この大阿闍梨は板軋みひとつ立てず軽やかに進んでいく。



集英社文庫より、全3巻の作品。

今まで、中島らもさんの作品はエッセイしか読んだことがありませんでした。ある日はてぶの人気エントリーで「小説まったく読まないんだが初心者におすすめの小説教えろ 東野圭吾とかいうの読んどけばいいのか?」とうのが目に留まり、さーっと目を通してみたところ、この作品が出ていました。絶賛する方が多かったことから早速購入です。

民族学学者の大生部多一郎はアフリカの呪術を研究しています。かつて東アフリカでのフィールドワークの際には、学者として素晴らしい業績を残しています。その時の論文『識閾下共感覚と呪術』を一般人でも読みやすいようにと書き下ろした単行本に、なんと『呪術パワー・念で殺す!』というあんまりなタイトルがつきますが、それが大ヒット。それ以来マスコミに引っ張りだことなります。露出回数が増えるほど、大学からは干されていく教授。大生部の学内での地位はどんどん落ち、研究予算さえままならないほどになってしまいます。そこで逆にマスコミに出るお金で、もう一度アフリカで長期のフィールドワークを行おうと夢見る教授ですが、そう簡単にお金はたまらないものです。

先回のアフリカ滞在中には悲しい出来事もありました。娘と妻を連れてのアフリカ入りでしたが、教授は研究に熱中するあまり、家族を放って村に行ってしまいます。暇をもてあました妻と娘は、ガイドの勧めで熱気球に乗ることにしました。妻が陸で気球を見守る中、娘とガイドと運転手の3人を乗せた気球は出発します。ところが、気球の様子がおかしい。いつもと違うところに流されていく。結局、この気球の事故で大生部夫妻は娘を失います。

娘を失ったショックから立ち直れず、大生部は酒に救いを求めアル中に、妻は精神が安定せぬまま暮らしている。第1巻では、妻がその失意のそこから新興宗教に救いを求めてしまいます。怪しい宗教から身を救うため、教授はテレビで知り合ったマジシャンとともに翻弄します。

第2巻では、ついに教授、アフリカ入りです。とはいっても、そこは教授のマスコミ露出の収入から得た資金によるものではなく、テレビ局の番組の一環としてでした。クルーをつれての呪術村の旅には意外な結末が待っていました。第3巻では、第2巻でのアフリカ滞在時に起きた出来事が原因で、東京へ戻った大生部一向に呪いが!

2chの力はすごいですね。みなさんが絶賛するだけあります。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・アフリカの呪術というと、『動物のお医者さん』の漆原教授を思い出します。そのせいか、大生部教授の姿が漆原教授に被ってしまった。

・読後の満足感、読み終わっちゃったーという脱力感、スゴいです。全身に力入れて映画を見たあとみたいな気分。

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2010

11/17

Wed.

14:24:50

つむじ風食堂の夜 

Category【日本文学


つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
(2005/11)
吉田 篤弘

商品詳細を見る


書き出しをご紹介します。

 

その食堂の皿は本当に美しかった。
 何の面白味もない、いたって平凡な白い丸皿なのだが、ひと皿を平らげたあとに現れるその白さが、じつに清々しくてよかった。
 よく見ると、皿の白さには無数の傷が刻まれてあり、ずいぶん長いことナイフやフォークやらを相手にしてきたことが窺い知れる。
皿だけではない。
 古めかしい飴色のテーブルにも、水の注がれたコップにも、あるいは、漆喰の、もう何色とも言えない不思議な色をした四方の壁にも、大小長短さまざまな傷が重なり合うようにして見つけられた。
「傷は、そこに人が生きていた証しですから」
 近所の古道具屋の親父が、そんなことを言っていた。そんなことを言っては、傷ものを売りつけてくるのだが、そうは言っても、傷によっては「得体が知れない」と目を逸らしたくなることもある。



『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の雰囲気が好きだったので、同じ著者の作品を読んでみました。

静かにゆっくり時が流れているかのような月舟町。主人公は雨について研究している「先生」です。先生はアパートの屋根裏部屋に住んでいます。屋根裏部屋は7階にあり、それなら7階と言い切っちゃえばよいのですが、法にひっかかるのか大家さんは屋根裏部屋と呼んでいる。

月舟町にはいつもつむじ風が起こる十字路があります。その角には懐かしい感じの食堂がある。パリの裏通りにあるビストロのような雰囲気です。メニュー一つにしてもここでは「コロッケ」ではなく「クロケット」になっちゃって、いつもの定食メニューが一風変わった名前になってます。

この食堂に集まってくるのは、帽子屋さん、くだもの屋さん、女優のたまごの常連さんがいます。食堂にはオセロというネコが待っている。オセロは片面は白、片面は黒だからオセロ。

先生は雨の研究のかたわら、文章を書いています。それは食べていかなくてはならないからで、雨に関することから雨にまったく関係ないことまでを書いている。先生の亡くなったお父さんは手品師で、その面影が今となって先生の心を捉えています。

この作品、映画にもなってるんですね。


つむじ風食堂の夜 [DVD]つむじ風食堂の夜 [DVD]
(2010/10/20)
八嶋智人月船さらら

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たしかに読んでいるだけでも、町の姿が目に浮かんでくる。ああ、こんな感じなんだろうなーと実感できる。

あったかい気持ちになれる小説です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・寒い日のシチューみたいな本でした。やんわり、ゆったり、ほっこりな本です。

・映画もよいけど、マンガとかピングーみたいなクレイ作品もいいかな、と思います。私の頭の中では、どこかヨーロッパの下町風な印象なんですよね。きっと1作目を読んでケストナーを連想したからだと思います。ケストナーの本にある下絵のような印象です。


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2010

11/16

Tue.

09:51:08

火車 

Category【日本文学


火車 (新潮文庫)火車 (新潮文庫)
(1998/01)
宮部 みゆき

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書き出しをご紹介します。

 電車が綾瀬の駅を離れたところで、雨が降り始めた。なかば凍った雨だった。どうりで朝から左膝が痛むはずだった。
 本間俊介は、先頭車両の中央のドアの脇に、右手で手すりをつかみ、左手に閉じた傘を持って立っていた。尖った傘の先端を床につき、杖の代わりにしている。そして、窓の外を眺めていた。
 平日の午後三時、常磐線の車内はすいている。座ろうと思えば、空席はたくさんあった。制服姿の女子高生の二人連れと、大きなハンドバックを抱えて居眠りをしている中年の女性、運転席に近い先頭のドアのそばで、両耳に突っ込んだイヤーフォンから流れ出る音楽に合わせ、リズミカルに体をゆすっている若者― 一人一人、仔細に顔を見ることができる程度の人数しか乗り合わせていない。別に無理をして立っている必要はなかった。
 実際、座ったほうがよほど楽なのだ。午前中のうちに家を出て、理学療法をみっちり受け、そのあと捜査課に寄ってきた。その間、タクシーも使わず、徒歩と電車だけでこなした。ひどく疲れている。背中はパンパンに張って、鉄板が押し込まれたような感じだ。



『林真理子の名作読本』に掲載されていた作品です。紹介文の最初の一言が「宮部みゆきは松本清張の長女である。」でした。続いてすぐに、それが真実ではないことが書かれていますが、あまりのインパクトの強さに読んでみたいと購入した書籍です。

主人公の本間俊介は刑事ですが、現在休職中です。書き出し部にあるように左膝を痛めたことが休職の理由で、怪我は強盗犯の逮捕現場で犯人に膝を打ちぬかれたからでした。現在は理学療法の治療を受けながら、療養中の身。本間の妻は交通事故で他界し、養子ではあるが一人息子の智は昼間は近所の井坂という主夫に面倒を見てもらっているような生活をしています。

ある日、亡くなった妻の遠縁の和也が本間を尋ねてきました。この男は妻の葬儀にも出席しなかったような人なのに、なぜ今頃になって?と思っていると、本間に行方不明になった女を捜して欲しいと依頼する。詳しく事情を聞いてみると、婚約者が行方不明になってしまい、方々手を尽くしたが見つからない。そこでぜひ、捜査のプロである本間にお願いしたいのだが、如何なものか?休職中だと聞いているので、是非頼みたいと言ってきます。

事は数やが婚約者の関根彰子にカードを作ることを勧めたことから始まりました。結婚の準備で何かと出て行くお金の多い時期、カードを持たない彰子に何かと不便だろうと勧めたといいます。通常カードが出来上がるには1ヶ月ほどの審査期間がかかりますが、銀行員の和也にはなるべく早くカードを作ってもらえるよう友人に頼みました。ところが数日後、友人から彰子の名前がブラックリストに載っていてカードが作れないということが判明。理由を調べた和也は、彰子がかつて自己破産を申し出ていたことを知ります。それを彼女に尋ねたところ、忽然と姿を消してしまったと言う。

タイトルである「火車」とは何か。内表紙の裏に、「火車【かしゃ】火が燃えている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。」とあります。彰子の姿を追い続けるうちに、この火車の意味がどんどんわかってくる。和也に聞いたあまりに少なすぎる彰子の過去を手がかりに、本間は一歩一歩距離をつめていきます。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・智と井坂さん夫妻の存在が、不思議な話の箸休め的存在になっています。智くん、いい子だー。

・本間の行動力が並大抵ではないせいか、話は早いペースで進んでいきます。次々とヒントとなる情報が現れ、読み手も推理を休めることができません。

・キーワードは「カード」です。単なる推理小説以上に、お金とカードの仕組みや後ろにある人の心理についても学べます。



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2010

11/15

Mon.

08:58:53

予告された殺人の記録  

Category【海外文学


予告された殺人の記録 (新潮文庫)予告された殺人の記録 (新潮文庫)
(1997/11)
G. ガルシア=マルケス

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書き出しをご紹介します。

 自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。彼は、やわらかな雨が降るイゲロン樹の森を通り抜ける夢を見た。夢の中では束の間の幸せを味わったものの、目が覚めたときは、身体中に鳥の糞を浴びた気がした。
「あの子は、樹の夢ばかり見てましたよ」と、彼の母親、プラシダ・リネロは、二十七年後、あの忌まわしい月曜日のことおあれこれ想い出しながら、わたしに言った。「その前の週は、銀紙の飛行機にただひとり乗って、アーモンドの樹の間をすいすい飛ぶ夢を見たんですよ」
彼女は、見た夢を必ず朝食の前に話すという条件で夢判断をし、それがよくあたるので評判だった。しかし、自分の息子が見たこの二つの夢や、彼が死ぬ日の朝までに彼女に語ったほかの樹の夢については、何ひとつ不吉な前兆に気付かなかった。



『林真理子の名作読本』で紹介されていた一冊。ノーベル章受賞作家G. ガルシア=マルケスの中編小説です。

コロンビアが舞台で、27年前に起きた殺害事件を時を経て振り返る作品になっています。なぜ友人のサンティアゴ・ナサールは殺されてしまったのか。

事件はアンヘラ・ビカリオの結婚式の翌日に起きます。アンヘラ・ビカリオはよそからやってきた富豪の息子バヤルド・サン・ロマンに見初められ、ついに結婚することを決めました。しかし、翌日の朝、アンヘラ・ビカリオは夫となったはずの男の手により実家へ連れ戻されてしまいます。もともとアンヘラ・ビカリオは彼を愛してはいなかったけれど、この破綻はサンティアゴ・ナサールの人生を急に短く縮める結果となりました。

アンヘラ・ビカリオは処女ではなかった。アンヘラ・ビカリオの結婚が破綻したことを聞いた双子の兄は、相手が誰であったのかを聞きだします。彼女が口にした名前は、地元の友人でアラブ系のサンティアゴ・ナサールでした。双子の兄は怒り狂い、名誉を守るためにサンティアゴ・ナサールを殺害しようとする。この殺害計画は町の誰もが知っていました。養豚場を営む双子は、豚を殺す刀を研いで町中サンティアゴ・ナサールを探して駆け巡ります。その時、彼らは町の人々に「俺らはサンティアゴ・ナサールを殺しに行く」と告げていた。盛大の婚礼のあとでしたから、誰もが双子が酔っ払っていると思ったに違いない。ほんの数人の人だけがサンティアゴ・ナサールの命を心配して翻弄しますが、しかし彼は自宅の門の前で双子に刺されてしまいます。

南米の文化背景がわからない私には、なんとも言えない異国情緒を感じました。とは言っても、もっとミステリアスで理解の及ばない世界です。迷信がまだ生きている世界とでも言うのでしょうか。語り手である「わたし」は、今かつての殺害事件について語っています。登場人物がつねにフルネームで呼ばれるところに、彼の冷静さが感じられました。とにかくコロンビアの町は混沌としている。そこへ古い風習が複雑に入り混じっていて、人々の心にも不満が募っている。そこへ起きた殺人事件は、その複雑さを象徴するようなものでした。

最後にはアンヘラ・ビカリオの今の様子があるのですが、なんとも悲しい結末です。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・コロンビアの土地柄というんでしょうかね。見えない文化背景が話しを怖く感じさせているように思います。

・これ、実際あった話がもとになっているんだそうです。

・コロンビアと言えば私は真っ先にShakiraを思い出すのですが、彼女のパワフルな歌とこの作品の世界が妙にマッチしていて、ますますコロンビアが魅惑の地に感じられるようになりました。


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2010

11/12

Fri.

13:10:32

チェーザレ 破壊の創造者 

Category【マンガ


チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)
(2006/10/23)
惣領 冬実

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一条ゆかり、小椋冬実、惣領冬実、成田美名子、山下和美... みんな子供の頃から大好きな漫画家先生です。私の小中学生時代はまだまだ昭和でして、なかよし、ちゃお、りぼん、別マ、ブーケこそがマンガの世界でした。平成に入った頃でしょうか。少女マンガ雑誌に作品を掲載されていた漫画家先生たちが、青年漫画雑誌の「モーニング」に登場するようになった。これ、私には結構ショッキングな出来事でした。あの頃はまだまだ男の子マンガと女の子マンガの間に垣根がありましたし、少女マンガのキラキラした世界がオヤジのものになるという変な恐怖もありました。ただ、山下和美先生の『天才柳沢教授の生活』が単行本になってからは、私も堂々とモーニングを読むようになりましたよ。

惣領冬実先生といえば、『ピンクなきみにブルーなぼく』のかわいいタッチの作品から、『ボーイフレンド』のようにただただ美しいアートを思わせるタッチものまでとにかく幅広い世界をお持ちです。漫画家先生はみなさん絵がお上手なのは当たり前ですが、少女マンガはやっぱり美しくなきゃダメなわけですよ。夢がある、別世界にどっぷり疲れるような絵筆の力が必要なわけですよ。その点で言うと、私は惣領冬実先生の絵が最も少女心を満足させてくれる「美」があると思います。

その惣領先生が、モーニングで作品を書いていたとはちっとも知りませんでした。しかも表紙にですね、絵がないんです。上の密林の画像には下のほうにカラフルな絵が見えてますが、それ帯ですのでお間違いなく。専門書や文学全集を思わせるようなシンプルこの上ない表紙です。

さて、タイトルのチェーザレとは一体なにか。
チェーザレとはルネッサンス期にイタリアに生きたチェーザレ・ボルジア(Cesare Borgia)のこと。スペインのボルジア家の出身ですが、父が枢機卿でローマで生まれました。非常に賢いやり手の男です。お話はチェーザレがピサの大学で学んでいる16歳の頃から始まります。当時のフィレンツェには、メディチ家という大富豪がおりました。その息子もチェーザレと同じ時期にピサで学んでいました。大学には、それぞれの出身地ごとに団を作ることになっており、チェーザレはスペイン団のトップにいる。他にはフィオレンティーナ(当時のフィレンツェの呼び名)団やフランス団などがあります。

もう一人の主人公は、フィオレンティーナ団のアンジェロ。彼が大学に入学した日こそが、物語のスタート地点です。アンジェロはメディチ家に認められたフィレンツェの石工を祖父にもち、その縁で大学で法を学ぶ機会を得ました。フィオレンティーナ団の長はメディチ家の次男ジョヴァンニで、枢機卿になる準備をしている。アンジェロはピサの事情に疎く、入学そうそう失敗をしてしまいます。ジョヴァンニにと乗馬で野に出るのですが、馬が暴走してしまいます。その馬はチェーザレがジョヴァンニに贈ったスペインの馬なのですが、ジョヴァンニはもてあましている。その馬に乗せられたアンジェロ、馬の暴走で崖から馬ごと落ちそうになります。そこへ偶然そばを通りかかったチェーザレがアンジェロを助けることから、二人の交友は始まる。

この時代にはレオナルド・ダ・ヴィンチやニッコロ・マキャヴェリなどのイタリア・ルネッサンスに色を添える人物が生きていた。またメディチ家も没落前であふれんばかりの財で国を形作っている。チェーザレの野心あふれる人物像が、惣領先生の細部まで美そのものの絵によって、より狡猾でより美しく感じられます。

現在8巻まで出ていますよ。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・絵がうまいといえば、惣領冬実。惣領冬実といえば、絵がうまい。昔、マンガで三国志を読もうとして挫折したことがあります。ガツガツした絵がどうもなじまなかった。でもこの本はすーっと読めました。

・巻頭や巻末に説明が載せられていることや、参考書籍として専門書までもが紹介されているのもうれしいです。

・歴史はマンガで勉強するのが一番かも。年代まですいすい頭に入ります。



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2010

11/11

Thu.

23:59:20

有閑倶楽部DX 

Category【マンガ


有閑倶楽部DX 1 (1) (集英社ガールズコミックス)有閑倶楽部DX 1 (1) (集英社ガールズコミックス)
(2007/10/15)
一条 ゆかり

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ついに買っちゃいました。一条ゆかり先生の『有閑倶楽部』!
「りぼん」で連載なさってた頃って、今考えると80年代なんですね。もう20年も経つんですねー。
信じられない・・・

今回私が購入したのはDX版というやつで、単行本との違いは、

①大きさ
②ページ数
③おまけのコメント

です。①はDX版の方がちょっと大きいです。ちょっと豪華になった気分がします。カラーページもキレイだし。ページ数もこちらの方が厚く、350ページ程度の枚数です。読み応えがありますよ。③ですが、1話完結するごとに当時のエピソードや登場キャラクターについての小さなエッセイがあります。へー!と驚くようなお話がいくつかありました。

このDX版は全9巻なんですが、今回手配ミスで1~3巻までを購入。残りは早速注文しましたが、早く続きが読みたいです。『有閑倶楽部』は、都内にある聖プレジデント学園に通う男3女3の高校生が主人公です。聖プレジデント学園には一流家庭の子供だけが通うことができます。ちなみに、主人公は大病院の医院長の息子、警視総監の息子、スウェーデン大使の息子、日本一の大企業のお嬢様、茶道家元のお嬢様、大宝石屋のお嬢様と麗しいお家柄。お金と暇をもてあます6人の派手な生活に加えて、あれこれ発生する事件がこれまた楽しいんですよねー。

『有閑倶楽部』と言えば、登場人物がみなお酒に関する名前であるというのも面白い。すっかり忘れてたんですけど、第一話に登場するロシア大使婦人はズブロッカ様。外国のお酒についても勉強できるという優れものです。

6人それぞれのキャラクターが奇抜なこともありますが、思いっきりのよい台詞を読んでいると知らず知らずに元気が伝わってくるような気がするのが不思議です。子供の頃は、この本に出てくる幽霊のエピソードが怖くてたまらなかったんですよね。今回大きな絵で読んでみて、あの時の怖さを思い出しました。


jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・ついに買いました!今、満足感でいっぱい。早く続きが到着しますように。

・やっぱり私はこの本でお酒の名前を覚えたに違いありません。何度も読んだかいがありました。

・剣菱万作、最高!


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2010

11/10

Wed.

12:18:55

きのう何食べた?(4) 

Category【マンガ


きのう何食べた?(4) (モーニングKC)きのう何食べた?(4) (モーニングKC)
(2010/10/22)
よしなが ふみ

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今週はマンガな気分です。

今回も筧の料理はおいしそう。もう4巻目なんですね。
相変わらずおいしそうなお料理ばかりで、豪勢なレシピというよりは家庭の味を中心としたものが出ています。本当に毎度新刊が出るたびに思うのですが、よしながさんの作品は料理本のマンガ版ですね。むしろ料理本よりも手順や味が伝わってくるかもしれない。ケンジのコメントがこれまた味を想像させるんですよねー。

しかし。

これ、もろ「和」の料理が多いんですよ。在外だと手に入りにくい食材がある。よって食べたい欲がかなり刺激されます。私の場合、みょうがの入ったお料理は夢に見るほど食べたくなりました。お料理のエッセイは食べたい欲が刺激されますが、このマンガの場合は作りたい欲、食べてもらいたい欲、そして自分も食べたい欲が雪崩のごとく押し寄せてくる。

何といっても大人味の料理が満載なのも良いですよね。料理本を買うと、お弁当やお子さんのおかずになりそうなレシピがいくつか含まれてます。この本の料理はつまみとも違う、ごはんとして食卓にあがるお料理だけど大人味なんですよ。その渋さがこれまた良い!カロリー控えめで、ボリューム感もちょうどよい。

煮込みハンバーグきのこソースでも作ってみようかしら。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・あんなにお料理上手の筧でも、かき揚げは苦手っていうのが笑えました。かき揚げって、なんであんなにうまくできないものなのかしらー。

・ケンジみたいな陽のキャラっていいですね。ほんわかします。


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2010

11/09

Tue.

09:14:41

Alexandrite 

Category【マンガ


Alexandrite (第1巻) (白泉社文庫)Alexandrite (第1巻) (白泉社文庫)
(2000/06)
成田 美名子

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今日もマンガですので、書き出しのご紹介は省略です。

1991年から1994年まで「LaLa」に連載された成田美名子さんの『Alexandrite』。こちらは文庫版で全4巻ですが、単行本は全7巻になっています。

昨日ご紹介した『Cipher』の続編で、シヴァとモデルの仕事を通して知り合った友人アレックスが主人公になっています。

タイトルのアレクサンドライトは色の変わる宝石で、アレックスが母親から代々伝わる指輪を渡されることからストーリーが始まります。『Cipher』を読むとより内容がわかりやすいと思いますが、彼はとっても美しい顔をしている。ただ女性に間違えられるほどに美しい。それゆえ、顔がコンプレックスという面白いキャラクターです。しかし、柔道や空手は黒帯級で、シヴァと同様コロンビア大の学生と言う文武両道、才色兼備な男です。

大学生の頃にこの作品を読み、「アメリカの大学ってかっこいー」と思いました。試験の話、バイトの話、恋愛の話など、大学生の元気に前向きな姿が今読んでも心地よいです。

本作ではサイファやアニスは頻繁に登場しませんが、アレックスが好きな女の子アンブローシアがこれまたいい味出してます。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・学生当時は、この本を読むたびに留学したい~!と思ってました。アメリカの大学生って、こんなにも自由でこんなにも未来が明るいのか!と読むたびに留学熱が高まります。そして今は「どうして若いうちに留学しなかったんだろー」と若干後悔。

・成田さんのマンガには悪い人が出てこないのがこれまたよいんですよね。アメリカの危なさというか、若者の危うさなどがニュースになる昨今ですが、このマンガの中のアメリカ人はみーんなよい人です。愛だわ。



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2010

11/08

Mon.

10:39:31

Cipher 

Category【マンガ


Cipher (第1巻) (白泉社文庫)Cipher (第1巻) (白泉社文庫)
(1997/03)
成田 美名子

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今日はマンガですので、書き出しは省略。

『Cipher』は1985年から1990年まで「LaLa」で発表された成田美名子さんの作品です。今回ご紹介のものは白泉社の文庫版で全7巻になっています。

実は私、中学・高校・大学時代と毎日この本のどこかを読んでました。当時は単行本(全12巻)を持ってまして、読む用と保存用との2セットを持っていたほどのファンであります。なぜにこれほどのめりこんだかと言いますと、東京すら行った事のない道産子女子だった私、アメリカを想像する資料をあまり持ち合わせていなかったのです。海外と言えば、兼高かおるさんの番組と時々放送される映画くらい。しかし、その頃の私はどうしてもアメリカがどんなものか知りたかった。だってマイケルの国なんだもの。

そのマイケルの国への欲求は、1冊目から完全に満足させられます。なぜなら、主人公がマイケルファンでマイケル人形を持っていたり、時にマイケルの音楽が登場したりするのです。85年スタートのマンガです。『Thriller』が82年に発売され、日本でもマイケルブームが始まったころに連載もスタートですから、音楽的にはむしろ自然なのかも。とにかく、私はそのマイケルの登場によっても、このマンガをアメリカ情報の師と仰ぐほどにワクワクしながら毎日読んでいました。ただ、ソウルには持ってこなかったんです。そこで新たにオーダーして約10年ぶりに再読したわけですが、ストーリーはところどころ忘れていたにもかかわらず、台詞や絵は覚えてました。

ストーリーは、双子の少年の心の葛藤と成長を描いたお話で、舞台はNYとLAになっています。
双子の兄ジェイクと弟ロイは、幼いころから子役スターとして活躍していました。ジェイクにはシヴァ、ロイにはサイファという芸名がありますが、これはインド系であった祖母がつけてくれた名前です。双子は元気に成長していくのですが、山岳登山が大好きだった父の死によりすべてのことが大きく変わります。父の死は、母の浮気に基づいていたと考える二人は、母親のもとを離れて二人だけで暮らすことを選択。しかし、高校生になったばかりの二人の生活は、なかなか順調といえるものではありません。ジェイクにもロイにも、それぞれ心の傷がある。

ある日、ジェイクはロイの様子がおかしいことに気づきます。同じ高校に通うも、構内でロイの姿を見かけない。その時ロイはゲットーに出入りして、生活をどんどんと崩し始めます。そこでジェイクは演技を打ち、双子の弟に自分の代わりに学校へ言ってもらうことを頼むのですが、それから二人はシヴァの名前で入れ替わりの生活を始めるのです。

そこへある日、アニスという女の子が「友達になりたい!」とやってくる。アニスとの出会いを契機に、二人はどんどんと変わってくる。まず、アニスが二人一役の事実に気づいてしまう。そこから、彼らの高校生活は波乱万丈となっていく。

本作品は、小学生から高校卒業までのジェイクとロイの姿を描いています。「アメリカの高校生って、こんななんだー」「NYってやっぱり大都会だー」などと思いながら、毎日アメリカで暮らすことを夢見ていた道産子娘は、なぜか今、ソウルの空の下で暮らしています。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・小学生の頃は、圧倒的におまけ付きのコミックばかりを読んでました。当時で言うなら「なかよし」「りぼん」です。中学生に入り、別マやLALAにもおもしろいマンガがあることを知りますが、その頃にはマンガより文庫本の小説が欲しいお年頃になっていて、マンガを買うことはありませんでした。ところが祖母の葬儀で、高校生のいとこが『Cipher』を読んでいて、2巻まで読んで「これは買いだ!」とその足で本屋さんに直行したのを覚えています。

・アラフォー世代で洋楽好きの女子には懐かしい作品だと思います。カセットテープが主流でMDが出始めた時期のお話ですので、ちょっぴり古さは否めませんが、ストーリーは最高にワクワクものです。






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2010

11/04

Thu.

14:15:39

白夜行 

Category【日本文学


白夜行 (集英社文庫)白夜行 (集英社文庫)
(2002/05/17)
東野 圭吾

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書き出しをご紹介します。

 近鉄布施駅を出て、線路脇を西に向かって歩きだした。十月だというのにひどく蒸し暑い。そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃が目に入りそうになった。顔をしかめ目元をこすった。
 笹垣潤三の足取りは、決して軽いとはいえなかった。本来ならば今日は非番のはずだった。久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ。
 右側に公園が見えてきた。三角ベースの野球なら、同時に二つの試合ができそうな広さだ。ジャングルジム、ブランコ、滑り台といった定番の遊戯設備もある。このあたりの公園の中では一番大きい。真澄公園というのが正式名称である。
 その公園の向こうに七階建てのビルが建っている。一見したところでは、何の変哲もない建物だ。だがその中が殆どがらんどうの状態であることを笹垣は知っている。府警本部に配属される前まで、彼はこの付近を管轄する西布施警察署にいた。



ソウルのリアル書店でも東野圭吾さんの作品が渦高く詰まれています。ただ文庫なのに1冊3万ウォン以上するとなると「今度帰国した時でいいや」となかなか手が出なかった。韓国でも東野さんは人気が高く、すぐに翻訳本が出てきます。「今まで一度も東野作品を読んだことがない」と言ったら、多くの人に驚かれたほどです。

今回この小説を読んだのは、生徒さんからおススメされたから。もう10年近く前の作品なんですね。韓国でも同作が映画化されましたが、書籍ほどのレベルじゃないとの評が高かったそうです。韓国語で本書を読んだ生徒さんから「これはおもしろい!」と進められまして、急遽取り寄せてみました。たしかに日本らしい内容の推理小説です。

とにかく厚さがはんぱじゃありません。850ページちかくありますので、検屍官シリーズの上下分を1冊にまとめたくらいのページ数です。それに驚きながら読み始めたのですが、登場人物の成長や時間の経過を追っていくうちに、あっという間に最終章までたどり着いてしまった印象でした。

大阪の建設途中のビル内で男性の殺人遺体が発見されます。発見したのはそこを遊び場にしていた小学生で、殺された男は近所の質屋の主人であることがわかるのですが、犯人は結局捕まらずで事件は未解決のままお蔵入りとなってしまいます。質屋の主人には小学生の一人息子がおり、話はこの青年の成長を追う形で進むのですが、同時に質屋の客であった女性の娘の成長も見逃せません。この娘がこれまた曲者で、美人で賢く礼節があり、男性なら必ずや惚れてしまいそうな美貌と人柄を持っています。それゆえ、どんどんと登場人物が増えてくる。章が変わった途端に新たな人物が出てきたりしますので、途中で読み止めてしまうと流れを追いにくくなるかもしれません。

長いお話ですが、2時間サスペンスドラマを見たような気分になりました。確かにこれは映画向きな内容ですね。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・事件の発生が70年代と昭和の真っ只中。昔ながらの刑事ドラマのようでした。

・ドラマ化された際のHPを見ました。キャスト、ぴったりですね。これはドラマも見てみたい。



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2010

11/02

Tue.

10:09:14

働く女性のための色とスタイル教室 幸せを呼ぶ外見のつくり方 

Category【ファッション


働く女性のための色とスタイル教室 幸せを呼ぶ外見のつくり方働く女性のための色とスタイル教室 幸せを呼ぶ外見のつくり方
(2009/01/29)
七江 亜紀

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書き出しをご紹介します。

はじめに

 外見は内面をつくり、内面は外見をつくります。
 外見は一瞬であなたのすべてを物語るからこそ、外見で人生の共演者も決まります。
 だからこそ、自分を輝かせる服を着ていれば、最高の共演者が見つかるのです。

 女性たちが夢や目標を達成するために必要な条件は、「知的であること」「コミュニケーション力があること」「美人であること」など、様々です。
 でも私は、なんといっても、人を引きつけるのに必要なのは、「外見のバランス」だと思うのです。

 では、外見のバランスがとれている人とはどんな人でしょうか?
 具体的に、3つの条件を想定してみました。

 1 自分に似合う、自分を魅せる色を知って身につけている
 2 自分の体型や雰囲気に合うスタイルを知って身につけている
 3 自分のファッションバランスを心得ている




以前、『色でキレイを手に入れる!』という本を読み、色がどれだけ人の印象を左右するかを学びました。女性はたいていおしゃれでファッションに関心があると思いますが、私は本当にファッション音痴で、何を着ていいのかがわかりません。そもそも着たい服がわからない。

さらに、顔色がいつも悪く見えるのも問題でした。もっさりしたパッとしない印象がぬぐえないのです。そこで『色でキレイを手に入れる!』を読み、色の持つ効果を知ったことで漠然と「あの服はおしゃれ」「あれはダメ」みたいな判断基準が生まれたように思います。『色でキレイ~』では大雑把にシルバーとゴールドの2色に分けて似合う色を判断していますが、本書では春夏秋冬の4色で判断をします。4パターンになった分、より細かい色の違いを知ることができるのと、合う色よりも合わない色の基準がよりはっきりしたのがお買い得なところでした。そもそもプロに診断して頂くと、何万円もの投資が必要になります。それが本1冊で手軽に行えるというのは、うれしいものです。そもそも色の判断ですから、大きなズレはないように思えます。

巻末に色判断に使用するシートがついています。鏡の前で肌がキレイに見える方を選択し、自分のタイプを見つける方法です。1枚は肌色系、2枚目はダークカラーのシートになっています。また、判断後はショッピングの際にも使えそうな色パレットもついていて、至れり尽くせりです。

化粧をしていない(めがねもダメ)状態で、上半身に白い服を着ます。日の光の当たるところに鏡を置き、自分の色を判断する方式です。私の場合は秋と春の中間のようで、判断が難しかったのですが、そのうち第三者の意見も聞きながら判断していきたいと思います。

また、色判断後はどのようにファッションで色を試すかもしっかり記載されていますので、便利です。アクセサリーや化粧品まで丁寧に書かれています。色だけではなく、体型や顔の形によるアドバイスもありますので、客観的に自分を見られるようになります。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・とりあえずは判断することからスタート。新しい発見がありそうです。

・なんとなくピンク、大雑把に青、など、色の違いに気づかずにいましたが、これからはもっと注意を払おうと思います。



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2010

11/01

Mon.

11:46:00

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 

Category【社会


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
(2009/12/04)
岩崎 夏海

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書き出しをご紹介します。

プロローグ

 川島みなみが野球部のマネージャーになったのは、高校二年生の七月半ば、夏休み直前のことだった。
 それは突然のことだった。ほんの少し前までは、みなみはまさか自分が野球部のマネージャーになるとは思っていなかった。それまでは、どこの部活にも所属していないただの女子高生にすぎなかった。野球部とは縁もゆかりもなかった。
 ところが、思いもよらない事情から野球部のマネージャーをすることとなった。そのため、二年生の夏休み前という中途半端な時期ではあったが、野球部に入部したのである。
 マネージャーになったみなみには、一つの目標があった。それは、「野球部を甲子園に連れていく」ということだった。彼女はそのためにマネージャーになったのだ。
 それは夢などというあやふやなものではなかった。願望ですらなかった。明確な目標だった。使命だった。みなみは、野球部を甲子園に連れて「いきたい」とは考えていなかった。連れて「いく」と決めたのだ。



私の手元にあるのが、2010年9月14日に出た第19刷です。帯にも「おかげさまで100万部突破!」とあります。とにかくいろいろなところで話題になっているので、いまさら感たっぷりですが、記録のために書いておくことにしました。

タイトル通り、進学校の女子高生みなみが、突然野球部のマネージャーになり甲子園を目指すというお話です。もともとはみなみの幼馴染で親友の夕紀がマネージャーをしていましたが、病気で入院することに。変わってみなみが夕紀のためにマネージャーを務めることになります。

そもそもマネージャーとはなんぞや?という疑問を持つみなみ。書店で「マネージャーに関する本を下さい」と尋ねると、店員はドラッカーの
『マネジメント - 基本と原則』のエッセンシャル版を進めました。とりあえず読み始めるのですが、途中でこれは野球の本ではないことに気づく。でも、世界で最も読まれているマネージメントの本という書店員の言葉を信じ、みなみはこの本とともに野球部をマネージメントしていきます。

面白いのは、大人が殆ど出てこないこと。せいぜい夕紀のお母さんと、野球部の監督でまだまだ新米の雰囲気を漂わせた加地だけです。高校生の目線から、ドラッカーのビジネス書を日常生活に落とし込んでいく姿が印象的でした。私はドラッガーの書籍を読んだことがないのですが、ドラッカーーに限らず、ビジネス書を自分に活かすにはどうすべきかがみなみの姿勢から学べます。

高校生らしい友情がこれまたスレた大人の心をくすぐるんですよね。なるほど、ベストセラーになったのがわかる気がします。あと、野球部のマネージャーだけに、名前が「みなみ」っていうのもツボですね。

jumee☆point1d この本を読んで jumee☆point1d

・素直さがいかに大切かがポイントの一つ。みなみの「必ずこの本に答えがある。迷ったらこの本に帰る」という姿勢、見習わなければ。

・女子高生といい、野球といい、ドラッカーといい、オヤジの心をわし掴みするタイトルですね。小説調のビジネス書や自己啓発書がいくつかありますが、高校生が主人公ということで新鮮味を感じました。


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